第3話:最後の思い出とすれ違い
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佐藤美咲の浮気を知ってから、私が先に電話を切ったのはこれが初めてだった。
以前はいつも、私が彼女に電話やLINEをしつこく送り続けていた。
ひどい言葉で罵ったこともあれば、必死に懇願したこともあった。
だが毎回、佐藤美咲はうんざりしたように言ったものだ。
「いい加減、狂ったみたいな真似やめてくれる?落ち着いたら話そう。」
そして容赦なく電話を切る。
何度かけても、メッセージを送っても、彼女は無視した。
手放そうと思っても、長年の関係がこんな形で終わるのかと思うと、どうしても気持ちを抑えられなかった。
なぜ裏切ったのか問いただしたかったし、戻ってきてくれとすがりたかった。
だが、どれだけ恨み、待っても、佐藤美咲は変わらなかった。
私は次第に不安と焦りに駆られ、本当に彼女の言う通り、狂人のようで、恨みがましい女のようになっていった。
そんな苦しい日々を、私はただやり過ごしていた。
三日前までは——。
私は「タイムカプセル」というブロガーの街頭インタビュー動画を偶然見つけた。
質問は「5年前の自分に何か言いたいことは?」
勉強を頑張れと言う人、家族ともっと時間を過ごせばよかったと言う人、7年後の自分は素晴らしいと自信を持って語る人——
……
そんな答えの中に、私は佐藤美咲と彼女の恋人・高橋蓮の姿を見つけた。
スマホ画面を何度も指で拡大して、間違いなく二人だと確認した。
やらせではないと確信した。
今の佐藤美咲の立場なら、トップ記者でもアポが必要なはずだ。
このブロガーは本当に通りすがりをインタビューしているようだった。
そして、彼は佐藤美咲にインタビューした。
最初、佐藤美咲はこの手のインタビューを不快そうにしていた。
だが、隣の高橋蓮は興味津々で、驚きと楽しそうな表情を浮かべていた。
「面白そうだよ、美咲、一緒にやってみよう。」
彼は佐藤美咲の肩を抱き、なだめるように言った。
佐藤美咲は困ったようにしながらも、結局折れて同意した。
ブロガーが自己紹介と趣旨を簡単に説明し、例の質問を投げかけた。
高橋蓮は考え込んだ。困った様子の彼を見て、佐藤美咲が先に答えた。
「もしできるなら、5年前の私が高橋蓮に出会えていたらよかった。」
その言葉を口にしたとき、彼女の視線はまっすぐだった。
彼の手をしっかり握っていた。
声は淡々としていたが、高橋蓮への深い愛情がはっきりと伝わった。
高橋蓮は驚いたように彼女を見つめ、そして微笑んで同意した。
「僕も同じだよ。」
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