第4話:終わりの協議と新たな旅立ち
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高橋蓮は、私に手を出すことはもうなかった。
私は本気でキレると何をするか分からないからだ。
彼は恨めしそうに私を睨んだ。
「もう美咲と離婚したんだ。まだそんなに偉そうにできるのか?」
「君には関係ないだろ。」私はそう言い返し、そのまま立ち去った。
家に帰ると、荷造りを始めた。
この家を望んだものの、長く住むつもりはなかった。
佐藤美咲との長年の苦しみを思い返し、今やこの家の全てが、ますます他人のもののように感じられた。
私はできるだけ早く家を売りに出した。
そして航空券を買い始めた。
佐藤美咲からもらった大金、しっかり使わせてもらうつもりだった。
しばらく旅に出て、離婚証明を受け取る時に戻ることにした。
出発前日、新しいLINEが届いた。
「こんにちは直樹様、私はブロガーのタイムカプセルです。あなたの街頭インタビュー動画は日曜の19時に投稿予定です。最終確認ですが、本当に公開しても大丈夫ですか?」
このメッセージを見ても、私は驚かなかった。
信じてもらえないかもしれないが——
佐藤美咲と高橋蓮の動画を見た翌日、私はあてもなく街を歩いていた。
偶然、同じブロガーに通りすがりとしてインタビューされたのだ。
同じ質問。
その時、私は可笑しくなった。
だが、なんという偶然だろう。
私はインタビューを断らず、答えながらふと思った——もし佐藤美咲が私の動画を見たら、どんな気持ちになるだろう。
「大丈夫です。公開してください。」
そう返信した。
同時に、最後の荷物を詰め終え、私は何の未練もなく家を出た。
最後に玄関で靴を揃え、深く頭を下げてから、私は静かにドアを閉めた。梅雨の湿ったアスファルトの匂いが漂う夜、遠くの自販機の明かりだけがぼんやりと光っていた。日本のどこか新しい街の、夜の灯りを思い浮かべながら。
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