第3話：偽りと真実のはざま

私は止めようとしたが、弾幕は止まらない——

【園子のいつもの手口w 悪役だけが毎回騙されるやつ】

【園子絶対本気で死ぬ気ないし。天皇操るための演技なの見え見え】

差し伸べかけた手を思わず引っ込める。最愛の妃が柱へ駆け寄るのを見ていたが、明らかに足が止まり、額を強く打ちつけたふりだけで、実際は赤い跡がついただけだった。園子妃はくるりと振り返り、倒れる直前に私を恨めしそうに睨みつけ、「思郎、あなたはなんて薄情なの」と、子どもの頃の呼び名をこんな場面で口にした。畳の上に横たわる「遺体」を見下ろし、私は初めて違和感を覚えた。ようやく、彼女の芝居に気づく。

何もする間もなく、再び煽り弾幕が——

【悪役、今ごろ胸締め付けられてるだろw 1円賭けるけど、クズ竜絶対駆け寄って抱きしめて号泣するよ】

【私も賭けるw】

【＋１】

今までなら、彼女が哀れに泣き、死ぬと騒げば私は必ず心が揺らいだはずだ。だが、今日は弾幕のせいで心が乱され、全てが面倒になった。彼らに馬鹿にされるのも癪だった。私は手を振り上げ、白檀の机を激しく叩く。

「誰か！妃が朕の休息を妨げている。すぐに連れ帰れ」

畳に横たわる「遺体」がビクリと震える。私は鼻で笑い、弾幕を睨みつけて意地悪く微笑んだ。さて、今度は何を言う？

廊下を駆けてきた女官たちが、畳の上で息を潜めながら、恐る恐る園子妃を抱き起こし、そっと部屋を後にした。私は静まり返った和室で、今まで味わったことのない妙な達成感と、心の奥にぽっかりと空いた虚しさを感じていた。