アプリをダウンロード
裏切りの夜に抱かれて / 第4話:柳の下の棺
裏切りの夜に抱かれて

裏切りの夜に抱かれて

著者: 相川 すず


第4話:柳の下の棺

「着きました。」

狭い山道を走り抜けると、ついに青松山墓地の門が見えた。鉄枠だけが残り、看板の文字もいくつか欠けていて、まさに廃墟そのものだった。私はゆっくり門をくぐり、墓地全体が山の斜面に沿って作られているのを見た。最初の二列は最近修繕されたようで、墓石や石畳が整っている。奥は雑草が生い茂り、墓は傾いて荒れ果てていた。

車のドアを閉める音が、山間に寂しく響いた。山の斜面にはツクシが顔を出し、遠くでカラスが鳴いていた。湿った苔の匂いが鼻をついた。空気が急にひんやりと重くなり、鳥の声も遠ざかる。

タクシーの運転手たちが乗車を拒否したのも無理はない。この場所はもともと無縁仏の墓地で、町が墓地に整備しようとしたが、工事が始まると奇怪な事件が相次ぎ、何をやっても解決せず、途中で放棄された。その後、この山道に近づく者はいなくなった。霧の日には必ず道端で車を止めようとする人影が見えるが、止まったら二度と帰れないと言われている。

昔から、この町では柳の木の下で縁切りをする風習があり、近所の子どもたちは決して近づかなかった。地元の言い伝えでは、金河橋の霧が出る日は「死人が道を切る」と恐れられている。子供たちも、決してこの道で遊ばない。

「名前は分かりますか?」私は階段下に車を止め、道具を持って降りた。村上萌は村上律子の腕の中でぼんやりと縮こまり、しばらくしてから首を振った。「聞いたけど、教えてくれなかった。」

律子さんの手が震え、萌さんの髪を何度も撫でていた。山の冷気が肌を刺す。

村上律子は焦った。「どうしよう、こんなに墓が多いのに。萌、他に何か手がかりは?」

墓石の列を見渡し、途方に暮れる様子が痛々しい。

村上萌は窓の外を見ることもできず、長い疲労で意識も朦朧としていた。じっと考え込んだ末に、「提灯があった。彼が家に連れて行ってくれて、入り口に大きな提灯が二つと、舞台と、魚…」

夢と現実の区別がつかず、言葉も途切れ途切れだった。

「萌、そういうものじゃなくて、名前か苗字を思い出して!」

律子さんの声に、かすかな涙の響きが混じる。

「大丈夫、まだ時間はあります。」私は焦る村上律子を制した。「まずは私が見てきます。二人はここで待っていてください。」

私はスコップを持ち、墓石を調べて回った。多くは風雨で文字が読めなくなっていた。奥の荒れた墓地では、墓石そのものが壊れているものも多い。見回しても特に目立つ墓はなく、もうすぐ正午になろうとしていた。いっそ適当な墓を掘って、村上萌の気の持ちようが変われば悪夢も治まるかもしれない、と考えた。

冷たい風が吹き抜け、汗ばむ額に土埃がまとわりつく。正直、私はまだ本当に「幽縁」がいるとは信じていなかった。

——柳の枝が揺れるたび、不安が胸を締め付けた。

この章はVIP限定です。続きはアプリでお楽しみください。

続きはモバイルアプリでお読みください。

進捗は自動同期 · 無料で読書 · オフライン対応