第6話：優等生の仮面と恋の罠

模試の結果が出た。

職員室の掲示板には、大きく私の名前が書かれていた。下足箱の前でも、みんなが成績表のコピーを回し見していた。スマホで写真を撮る音や友達同士の小声の会話が、いつもの日本の学校の日常を彩る。

私は学校全体で一位。

誰もが「当然」といった顔だった。

近隣八校の中でもぶっちぎりの一位だった。

「八校模試」——桜ヶ丘高校が初めて他校を圧倒した日だった。

二位に三十点近い差をつけていた。

廊下で友人が「すごい差だね！」と興奮気味に話していた。

私の写真と成績表が広まると、桜ヶ丘高校の評判は他校を圧倒した。

進学塾の講師も「今年の桜ヶ丘は違う」と話題にしていた。

私のクラスは優秀クラスとして表彰され、公開で称賛された。

朝礼で校長が「模範」と褒め、クラスメートは拍手を送った。

かつて私をいじめていたアヤカに対して、私はいつも寛容な笑顔を浮かべた。「もう過去のことです。彼女が反省して変われば、それでいいんです」

そう言いながら、私は彼女をまっすぐ見つめた。

私が寛大に振る舞えば振る舞うほど、アヤカの評判は悪くなった。

廊下や体育館で、彼女は「裏で何を考えているのか分からない」と噂された。

彼女は毎日私を憎しみのこもった目で睨んでいた。

その目線を、私はあえて無視した。

だが、私の周囲には称賛の声ばかりが響いていた。

「勉強の女神、崇拝します」

「写真を拝ませてください。化学の点数が十点上がりますように。せめて八十五点、お願いします。どうやって満点取ったの？」

教室の後ろで、クラスメートが手を合わせてお祈りポーズをしていた。

「数学も満点……すごい」

「作文の点も高いし、本当にオールラウンダーだ」

「絶対天才だよ。私は彼女の隣の席だけど、昨日一日中見てた。化粧もしてないし、クマもなかった……多分、アヤカが嫉妬してデマを流してるだけ。呆れる」

みんなの好奇心と妬みが入り混じった視線が、背中に集まった。

席に戻ると、隣の子が興味津々に聞いた。「ミユキ、あんなに多くの人に追いかけられて、誰か好きな人いるの？」

彼女の声は、どこか羨望を含んでいた。

私はまた首を振った。

「ううん、今は誰にも興味がない」私は小さく笑って答えた。

アヤカが送り込んできた人たちはみんな退屈だったし、他に近づいてくる人たちはさらに下手な演技しかできなかった。

私は心の中で、舞台の観客になったつもりで彼らの振る舞いを見ていた。

隣の子は小声で言った。「やっぱり高嶺の花だね——手が届かない」

「手が届かない花」とは、まさに今の自分のことかもしれない。

ケント以外にも、1人、2人、3人、4人、5人……数え切れないほどの人が私を追いかけていた。

生徒手帳のメモ欄には、名前が書ききれないほどだった。

私は新しいものが好きだった。できれば私の好奇心を刺激してくれる人がいい。でも、誰もそれを叶えてくれなかった。

教科書の端を指でなぞりながら、私は「面白い人はいないかな」と心の中で呟いた。

そんなとき、転校生がクラスに現れた——心を奪うほどの美男子だった。

教室の扉が開いた瞬間、みんなの視線が彼に釘付けになった。

彼はとてもハンサムだった。

整った顔立ち、すらりとした体型。制服がやけに似合っていた。

腹筋も割れていた。

体育の着替えで、男子たちが「すげー」と騒いでいた。

甘えるときの声も可愛かった。

「ミユキちゃん、これ貸してもいい？」と、どこか幼さを残した声で頼まれると、女子たちがざわついた。

何より、彼は面白かった。他の人が私を追いかける中、彼は堂々と自分の美貌で誘惑してきた。

「綺麗なものには価値がある」と言わんばかりの自信があった。

私はわざと濡れたまま現れたナオを見つめた。白いシャツが腰に張り付いていた。

雨上がりの昇降口で、彼のシャツは透けて、少しだけ肌が見えた。

「またいじめられたの？」

声に同情を混ぜてみせる。日本の女子がよく使う、やや上から目線のトーンで。

私は少し同情するような目で彼を見た。

「大丈夫？」と一歩近づき、髪についた水滴をそっと払った。

彼はうなずき、黒髪が素直に額にかかっていた。

その仕草が、どこか儚げだった。

私の指先が喉仏の下をなぞる。「ボタンが外れてるよ」

指先で軽くボタンをはめ直すと、彼は顔を赤らめてうつむいた。

可哀想な生き物は、いつも心をくすぐる。彼はおずおずと私の手を掴み、私を誘惑した。

「そんなに嫌われてるのかな？女の子みたいだって言われて、みんなにいじめられるんだ」

声が震えていて、本当に傷ついているように見えた。

私は彼の清潔で無垢な外見を見てから、LINEに送られてきた匿名の動画を見て、微笑みを深めた。

動画の中のナオは、まるで別人だった。スマホを握る手が、わずかに汗ばむ。

騒がしい個室で、ナオは赤ワインを女性の胸にかけ、嘲るような表情で言った。「いい胸だな。花でも活けてみるか」

その言葉の冷たさに、私の背筋がぞくりとした。日本の夜の店の個室のような、薄暗い雰囲気。

そして、トゲのあるバラを女性の怯えた視線の下で容赦なく押し付けた。

「出て行け」

ナオの声は苛立っていた。

グラスの中の氷がカランと音を立てた。

彼の演技は完璧だった。その瞬間、桜の花びらが彼の髪にひらりと落ち、純粋で無害に見えた。

窓の外の桜並木から、ひとひら花びらが舞い込んできた。春の終わりの、静かな奇跡だった。

でも周囲は知らなかった——男の嫉妬は恐ろしいものだと。

私はその「裏の顔」にだけ、ほのかな興味を持った。

私が公然と彼の容姿を褒めた日、すぐに誰かがナオの下着姿を暴露した。

SNSの匿名アカウントが、あっという間に噂を広めていった。

私はティッシュで彼の髪を拭いた。「私の隣の席になりたい？」

その言葉に、彼は小さくうなずいた。春の午後、窓からそよぐ風が二人の距離を近づけた。