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裏切りの優等生 / 第7話:恋愛ゲームと暴かれる真実
裏切りの優等生

裏切りの優等生

著者: 小野 まどか


第7話:恋愛ゲームと暴かれる真実

学校の隣の二棟のビルはナオ家の寄付だった。彼に手を出せる者はいなかった。

地元商店街の人たちも「ナオ様には逆らえない」と噂していた。彼の家は代々地域に貢献してきた名家だった。

席替えを頼むと、担任はすぐにOKし、学校から奨学金まで貰えた。

「特待生」として表彰され、賞状を手にした。先生も「期待している」と優しく微笑んだ。

放課後、私が教科書を片付けていると、濡れたキスが首筋に落ちた。

教室の照明がやや暗く、誰もいない静けさの中で、彼の唇はとても熱かった。

「優等生は勉強しなくても成績いいでしょ?今夜はもう少し一緒にいようよ?」

ナオの甘えた声には、どこか挑発的な色気があった。放課後の静けさと相まって、心臓が速くなる。

甘えた声に、どこか皮肉が混じっていた。

それが彼の演技だと知りながらも、私は少しだけ胸が高鳴った。

私がそれ以上を止めようとすると、彼は私の指を噛んだ。唇は柔らかく、視線は私の唇に釘付けだった。

ガラス越しに見える夕焼けが、二人の影を重ねていた。

「教室にはカメラがあるよ」

私は誘惑そのもののナオを見て、止めた。

「じゃあ君の家は?」ナオは身を寄せた。

その一言に、私は思わず吹き出しそうになった。「君の出来次第かな」

私たちはこっそり付き合って一ヶ月、大学入試まであと一ヶ月だった。

誰にも知られず、LINEで連絡を取り合い、時にはカラオケボックスで密会することもあった。

恋愛も成績も両立し、ナオがいろんな理由で私の宿題や参考書を持ち去っても、私は一位をキープしていた。

深夜、机の上で勉強していると、ふと彼の存在を思い出した。

私の成績が落ちるまで、ナオは諦めなかった。家に誰もいないと知ると、堂々と私の家に付いてきた。

玄関のチャイムが鳴り、彼がコンビニ袋(からあげクン、おにぎり、午後の紅茶入り)を提げて現れる。無防備な少年の顔だった。

ナオは勉強が嫌いだったが、家に着くと私は彼に問題集を解かせた。

リビングのテーブルには、鉛筆の削りカスが積もっていた。

彼は公式を眺めて嫌そうに言った。「これ正解したらご褒美ある?」

私はうなずいた。

「頑張ったら、ご褒美を用意する」と小さく囁いた。

彼は不満をぶつけるように問題を解き、正解すると肩を抱き寄せてきた。「できた。今夜のご褒美だ」

その瞬間、彼の瞳は少年のように輝いていた。

高校生の男の子は、いつもエネルギーに満ちている。

私は少しだけそれを楽しんだ。

膝に頭を乗せて甘える彼を、私は冷静に見つめていた。

だが、ナオは私の澄んだ目を見て、不機嫌そうに言った。「ミユキ」

「この問題、間違ってるよ」

私は最後のページにミスをマークした。

彼の声には、どこか拗ねた色が混ざっていた。

ナオは堂々と怠けていた。家が裕福だから努力する必要はないと思っていた。

「どうせ俺なんて…」と呟く彼の横顔は、どこか子供っぽかった。

彼は拗ねて、私の手を少し乱暴に掴んだ。「勉強、勉強って……ミユキ、君は僕のこと全然好きじゃないだろ」

彼の手の温もりが、一瞬だけ心に触れた。

でも私は彼をなだめなかった。

静かに手を振りほどき、私は「好きかどうかは関係ない」と心の中で呟いた。

駄々をこねる男をなぜ私があやさなきゃいけない?

私は他人の感情に左右されることはなかった。

彼がアヤカのために私を誘惑しに来たなら、私に感情的価値を与えるのは彼の役目だ。

私はそのゲームを冷静に楽しんでいた。

それに、彼の顔は本当に美しかった。

「美しいものは飽きやすい」と昔から思っていたが、ナオはまだその法則を壊せていない。

私は全く冷戦など感じなかった——朝食を抜かせて、体を使って私の気を引こうとしても、私は気にしなかった。

台所でおにぎりを作るふりをしながら、彼のふてくされた顔を横目で見ていた。

私は彼の腕に触れた。彼の美しい瞳は不満と怒りでいっぱいで、片手でお腹を押さえながら背を向けた。

その姿に少しだけ笑みがこぼれた。

でも彼は気づいていなかった——先に落ちた者だけが、無視されて怒るのだと。

「恋愛はいつも先に夢中になった方が負け」と、母がよく言っていた。

最初から最後まで、私はただ冷静な傍観者で、彼が癇癪を起こすのを眺めていた。

匿名の送信者から新しい動画が届いた。

スマホの画面に「未読メッセージ」の赤い数字が表示された。

動画には見覚えのある顔——アヤカが私を陥れようと集めた連中が映っていた。

彼らの表情はどこか陰険で、まるで学園ドラマの悪役そのものだった。

「さすがナオ兄——現れた途端、ミユキはもう夢中だ」

「ナオ兄、どうやってミユキに自分から席替えをお願いさせたの?」

ナオの声がはっきり聞こえた。どこか誇らしげだった。「手強いかと思ったけど、呼んだらすぐ来たよ」

言葉の端に、どこか嘲笑が混じっていた。

「ナオ、俺の従妹はずっとお前が好きだったんだ。アヤカを裏切るなよ。いつ別れるんだ?」

「アヤカのために」と言われても、彼の声はどこか他人事だった。

ナオは眉を上げた。「寝たらすぐだよ。外の派手な女よりずっと可愛い」

動画の中でグラスが割れた。

氷が飛び跳ねる音と共に、空気が凍りついた。

ケントが飲み物を倒した音だった。

「おい、何してんだよ」と誰かが焦っていた。

アヤカの甘えた声が響いた。「まさか本気になってないよね?こんなに時間が経っても彼女の成績が落ちてない。彼女、全然お前のこと気にしてないと思う」

その言葉に、誰かが小さく笑った。

バーの音楽はうるさかったが、ナオの軽い言葉ははっきり聞こえた。「親もいない貧乏な孤児なんて、どうして好きになる?価値あるか?ガンの診断書も準備した——試験一ヶ月前、全力でいくよ」

その場にいた全員が、少しだけ黙った。

匿名の送信者は私に訊ねた。「ここまで来て、まだナオが好き?」

スマホの画面が、夜の静けさの中でやけに明るかった。私は窓の外を見て、深呼吸した。春の匂いが、部屋の中に流れ込んできた。

私はスマホを伏せて、静かに目を閉じた。次は、誰の仮面が剥がれるのだろう——

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