第4話：誘惑と仮面の関係

私の退屈な日々が急に面白くなった。

それまで静かだった教室が、まるで文化祭前日のようなざわめきに包まれた。私に話しかける生徒の数が急に増えた。

突然、多くの人が私と友達になりたがった——皆、地元の有力者や会社経営者の子息ばかり。

みんな、どこかで聞いたことのある名字の子たちだった。彼らは自分の腕時計やペンを自慢げに見せてきた。

「ミユキ、あの銀座の寿司屋美味しいよ。一緒に行こう」

本物の寿司屋に行くのは、受験生には贅沢すぎる気がした。ケントの言葉には、都会的な余裕があった。

ケントは11組の生徒で、身長185センチのプレイボーイ。

長身で、制服のズボンの丈がやや短めだった。運動神経も良く、校内では「女子の憧れ」と噂されていた。

彼はアヤカの従兄で、取り巻きの一人。容姿端麗、家柄もよく、女遊びで有名だった。

生徒会選挙では、女子の投票で常に上位だった。

彼は私へのアプローチを隠さなかった。

廊下ですれ違うとき、わざと手を振ってきたり、帰り道に一緒に歩こうと誘ってきたり。

私が唯一、時々返事をした男子だったため、私たちが付き合っているという噂が立った。

放課後、女子たちがヒソヒソと話す声が聞こえた。「あれ、ミユキとケント、昨日も一緒にいたらしいよ」

担任に呼び出され、11組の担任も同席した。

職員室の奥の小さな会議室。空気はどこかピリついていた。

ケントの担任は厳しく、彼を睨んだ。「今は勉強に集中しろ。成績が悪いのに他人を巻き込むな。親にも連絡済みだ。明日、千字の反省文を書け」

ケントはうつむき、拳を握った。彼の背中越しに、窓の外の夕焼けが差し込んでいた。

「君のご両親にも昨日話した。芸術方面を目指すのはダメだって。美術の先生も君は規律がなさすぎて受験に向かないと言っていた」

ケントは拳を強く握りしめた。

彼の爪が食い込むほど、机の端をつかんでいた。

担任は機関銃のように叱り続けた。

言葉の嵐が、教室の壁に反響していた。

また私の成績に悪影響を与えるなと言われたとき、

私は無表情で口を挟んだ。「先生、彼は私に何の影響もありません。私は必ず一位を取ります」

静かな声でそう言うと、教室の空気が一瞬止まった。

11組の担任は言葉に詰まったが、私の担任がすぐにフォローしてくれた。

「はいはい、もう帰っていいぞ」

そう言いながら、先生はそっと私の肩に手を置いた。私は小さく会釈して席を立った。