第4話:ヴィラでの再会
4
ロケバスが現場に到着すると、すぐカメラが回り始めた。
「橘悠真、目の下のクマがひどいな。隼人と小お嬢様が公開したのを見て眠れなかったんじゃない?笑」
楽屋でメイクをしながら、共演者たちがわざとらしくからかってくる。「まあまあ、隼人の人気はすごいから仕方ないよね〜」
「その不機嫌な顔、完全に嫉妬だろ。」
「隼人ファン、今朝は歯磨き忘れた?口が臭すぎ。」
「橘悠真がまた隼人とリソース争いしたら、小お嬢様に即ブロックされるな。」
「これから隼人の仕事は全部小お嬢様経由になるぞ。」
その空気に、スタッフも「今日は波乱の予感ですね」と囁き合っていた。
収録ヴィラに着くと、ゲスト全員が隼人の周りに集まり、褒めちぎっていた。
番組名は「私とデートして」。
男女各4名のゲストが3日2晩一緒に生活し、リアルタイムで生配信される。
ヴィラの庭には朝露が光り、キッチンからはコーヒーのいい香りが漂い、開け放たれた窓からは蝉の声や畳の匂い、冷たい麦茶のグラスも並ぶ。日本の初夏の空気が満ちていた。
みんなSNSの話題で持ちきりだ。
冒頭、ディレクターが隼人にカメラを向けて聞いた。「昨夜、小お嬢様と公開したって本当?」
「えっと……」
隼人は照れたように、「その時が来たら、みんなに分かるよ〜」と答えた。
顔を赤らめて下を向く仕草が、女の子たちの心をくすぐるらしい。
ディレクターはこの話題で視聴数を稼ぐつもりで、さらに追及した。
「じゃあ隼人、昨夜は何があったの?小お嬢様の深夜投稿は惚気だったの?」
隼人は不満そうに足を踏み鳴らしてみせた。
「彼女が番組中に寂しいからって犬を連れて来たがってて、俺がダメだって言ったら、子供みたいに仕事中に犬を持っていかれちゃったんだ。」
隼人の即興芝居に、私は呆れ果てた。
心の中で「台本かよ……」とツッコミを入れつつ、思わず口を挟んだ。
「インタビューで『子供の頃犬に噛まれて以来、絶対飼わない』って言ってなかったか?」
周りがざわつく中、その一言が妙に場を引き締める。
続きはモバイルアプリでお読みください。
進捗は自動同期 · 無料で読書 · オフライン対応