第3話:噂と裏切りの渦
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コメント欄を見ていると、ネット民が質問していた:
「本当に小お嬢様と付き合ってるの?」
隼人は返信しなかった。
だが数分後、彼はいくつも「二人の幸せを願う」系のトップコメントに『いいね』した。
さりげなく気持ちを匂わせる、まさに芸能人らしい対応。ファンの間では「公認カップル」ムードが一気に加速していく。
それはもう、彼と紗良が付き合っていると認めたも同然だった。
「隼人はもう十分匂わせてるのに、まだ聞くの?上の人は橘悠真チームのアンチだな。」
「聞いただけでアンチ扱い?本当なら隠す必要ないでしょ。私は嘘だと思う、ただの話題作りだよ。」
「隼人にも事情があるんだよ。はっきり認められないだけ。皮肉やめて。」
「公開する時が来たら、隼人がTwitterで真っ先に発表するよ。アンチは消えろ。」
叩かれたネット民は、紗良のコメント欄にも質問しに行った:
「村上社長、本当に桐谷隼人が彼氏なんですか?」
紗良はすぐ返信した:「誰がそんなこと言ったの?誰が?私、彼のこと知らないし。」
その返しがまた大喜利のように拡散され、「#小お嬢様塩対応」までトレンド入りする始末。
隼人ファンは不満顔:「隼人がこれ見たら悲しむよ。」
紗良は反撃:「彼が悲しもうが私には関係ないし。あと、お粥なんて飲まないから、粥舟って呼ぶのやめて。」
粥舟、というあだ名の謎は深まるばかりだ。
このやりとりはすぐトップに躍り出た。
ネット民は即座にスクショして隼人のコメント欄に貼り付けた。
「話題作りやめろ。小お嬢様は桐谷隼人のこと知らないって言ってるぞ。自惚れるなよ。」
SNSでの拡散スピードは驚異的だ。コメント欄はあっという間に荒れていった。
その直後、隼人ファンが大挙して押し寄せた。
「今はまだ公開できないだけ。小お嬢様が否定するのは当然。」
「カラー(他推し)ファンは暇だな、うちの隼人をずっと見張ってるし。」
「某アイドルも最初は否定してたけど、今や毎日配信で惚気てるじゃん?」
マネージャーはトレンドを見て顔色が悪くなった。
「君と桐谷隼人は同時デビューで、どちらも“独立系若手俳優”のイメージ。ファン同士の争いも絶えない。」
「今や彼は村上社長に取り入ったから、今後は彼に押されるかもな。」
私は脳がオーバーヒートしそうだった。
「もう、今日の番組が終わったら一旦家に帰ってカツ丼でも食べたい……」と心の中でぼやいた。
隼人は話題作りのためなら何でもやる。
本当に紗良の彼氏を装うとは。
私がぼんやりしているのを見て、マネージャーが慰めてきた。
「気にしすぎるな。これからはできるだけ隼人と仕事が被らないように調整するよ。今日の番組は最終回だし、距離を取って、揉め事は避けてくれ。」
「……分かりました」と、私は形だけ頷いてみせた。
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