第3話:出会いと運命の交差
その日、牢の扉が開いては閉まり、新しい囚人が次々と入れられ、多くの空き牢が埋まった。
——「何かが変わる……」胸の奥で小さな期待が膨らむ。牢の外から、草履のすり足や看守の怒鳴り声が交錯する。
私は鉄格子にしがみつき、期待に満ちて見ていた。
——指先が白くなるほど力を込めて鉄格子を掴んでいた。小さな希望に、胸が高鳴った。
「一人、こっちに回してくれ、一人でいいから。」
——祈るような声。日本の古い童話「一寸法師」のように、小さな願いでも叶えば……と願っていた。
看守たちは私を頭のおかしい奴だと思っているようだった。
——「どうせ、変人だと思われてるんだろうな」と、心の中で自嘲した。牢の中では、まともでいることのほうが珍しいのかもしれない。
哀れみか嘲りか、実際に新しい同房者を私の牢に入れてくれた。
——「ありがとう」と声に出しそうになったが、今はぐっとこらえる。牢の空気がわずかに揺れるのを感じた。
それは男で、看守に引きずられ、足はぐったりして袋のように地面を引きずっていた。
——「大丈夫かな……」彼の姿に、日本の昔話に出てくる落ち武者を重ねてしまった。どこか気高いものを感じた。
全身血と埃にまみれ、髪は顔にかかり、囚人服はぼろぼろ、鞭や焼き印の跡が交差し、まともな肌はほとんどなかった。
——「ああ……」思わず息を呑む。日本の武士が捕らえられたときの痛々しさを、まざまざと感じる。
「お兄さん、この人は誰?何をやったの?」
「お前と同じ、死ぬ人間だ。」看守は私に唾を吐き、提灯を持って去っていった。
——唾の音が、耳に残る。彼らの冷たさは、どこかで見た日本映画の悪役のようだった。
牢は再び真っ暗になった。目が暗闇に慣れていても、彼の輪郭しか見えない。
——暗闇の中、わずかな息遣いに意識を集中する。日本の夏の夜、蝉の声が消えた後の静けさを思い出した。
本当に死人のようで、呼吸の気配もない。
——「生きてる……?」と、何度も確かめたくなる。
私はしゃがみ込んで彼を観察し、その周りをぐるぐる回りながら、思わずにやけた。
——どこか滑稽な光景だったかもしれないが、それだけ生きている証が欲しかった。
「あの……聞こえますか?少しだけでも、話してもいいですか?」
「何か言ってください、お願いです。」
——声が牢内に反響する。子どもの頃、夏休みに田舎の友だちを呼ぶ声と同じだった。
心臓がどきどきした——緊張ではなく、興奮で。
——誰かと出会えるだけで、こんなに胸が高鳴るものかと驚いた。
以前なら、死刑囚が隣にいると知ったら、八十メートルは逃げ出していただろう。
——自分の臆病さを思い出し、苦笑いした。
だが今、四十九日もこの狭い場所に閉じ込められ、もう自分で終わらせたい気分だった。話すネズミの精霊でも拝んだだろうし、こんな大きな生きた人間ならなおさらだ。
——「お願いだから、少しだけ会話を……」と心で念じた。
同房のお兄さんはまったく反応がない。
——「……まさか、もう……?」
私は彼の乱れた髪を払い、彼の目が開いて天井をぼんやり見つめているのを見た。
——「生きてる」……ホッと胸をなでおろす。日本の小説に出てくる「死んだような目」を、まさに実感した瞬間だった。
呼吸を確かめると、指先に温かい息を感じた。
——「よかった」……自分の声が小さく漏れる。生きていることが、これほど嬉しいと思ったのは初めてだった。
よしよし、まだ生きてる。
「へへ、外の天気はどう?晴れてる?雨?」
「ここに来てから、太陽なんて一度も見てないよ。」
「お兄さん、そんなに冷たくしないで。同じ暇人同士、話そうよ。」
「何をやって死刑になったの?」
——質問攻めしている自分が、少し子どもっぽく思えた。だが、そうでもしなければ、心が持たなかった。
私は一人で延々と話し続け、ネズミの夫婦まで静かになった。
——ネズミも、私のうるささに呆れているのかもしれない。牢の中に小さな静けさが戻った。
しぶしぶ信じるしかなかった。
ああ、同房のお兄さんは拷問で正気を失ったのかもしれない。
——「仕方ないか……」と、諦めにも似た気持ちになる。日本人は、どうしても他人の苦しみに共感してしまうものだ。
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