第7話:書店の夜と不穏な影
希望があろうとなかろうと、私は東雲圭吾を救わなければならない。それがシステムに蘇らされた理由であり、生き続ける唯一の道だ。
だが、彼を救う前に、まず自分の生活を何とかしなければならなかった。
私は東雲圭吾の会社の下にある書店で、夜勤の司書として働き始めた。シフトは深夜零時まで。
ビルの一階にある古びた書店は、木の香りが心を落ち着かせた。レジ脇には招き猫がちょこんと鎮座していた。
「今日もありがとうね、紗耶さん」と店主が声をかけてくれる。常連の老紳士が棚の文庫本を一冊ずつ手に取り、ゆっくり選ぶ姿がある。ガラス戸越しに夜風が吹き込み、店内には静かな温もりが満ちていた。
向かいのビルの灯りはまだ消えず、私は書店の階段に座り、すでに冷めたおにぎり弁当を広げた。
0時7分、東雲圭吾の黒いレクサスが通り過ぎた。
スモークガラスで中は見えないが、弾幕がまるでX線でも持っているかのように彼が乗っていると騒いでいるので、分かった。
「また車だけ見て終わり?」「はい、今日も平和」「あーあ、せめて絡んでくれよ」
「このまま毎日書棚整理を見せられるのか?」
「詰みフラグ立ちっぱなし」
私は騒がしいコメントを無視し、その時初めて、尻尾を振って私を見上げる野良犬に気づいた。目は食べ物を求めて輝いている。
おにぎりの肉を二切れだけ野良犬に分け、夜空の下で一緒に夕食を取った。
遠くで終電のアナウンスが響き、コンビニのネオンが静かに夜を照らしていた。
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