第4話:裏切りの朝と決意の出発
私の上司は外国人だが、私を高く評価してくれており、以前から海外支社の地域マネージャーを強く勧めていた。
部長の日本語はたどたどしいが、その熱意だけはストレートに伝わってきていた。
だが、それは長期の海外赴任を意味し、英語が苦手なアヤカには適応できないだろうと断っていた。
その機会を、あのクズのハヤシに譲りそうになったこともあった。
だが今や、アヤカは私の人生に不要だ。断る理由はない。
上司は大喜びで、すぐに給料を倍にし、ビザ取得も全面サポートすると約束してくれた。
「人生は一度だけだ、タクミ。家族のことは心配いらない、現地の生活も会社が全力でサポートする」
翌朝、朝食会場でハヤシと鉢合わせた。
ホテルのレストランに、スクランブルエッグの湯気と朝食会場のBGM、新聞をめくる音が混ざっていた。宿泊客たちが小声で話し、ちらりとこちらの様子をうかがっている。
彼は目の下にクマを作り、足取りもふらついていた。
私の顔色も悪いのを見て、急に機嫌が良くなった。
「おう、タクミ、昨日うるさかった?男同士だから分かるだろ」
「そうだ、お前は完全に尻に敷かれてるんだったな。女なんかに人生を捧げるなよ」
私は言葉を失った。彼の言う通りだった。アヤカに弄ばれて、私は愚かだった。
自分がどれだけ滑稽か、苦々しい笑いしか出なかった。
私が黙り込むと、ハヤシは私が心変わりしたと思い、さらにニヤニヤした。
「正直、昨日の女は最高だったぞ。あの口、あの腰、あの長い脚——マジで一級品。どんなプレイでもOK。ただ、写真だけは絶対に撮らせなかった。見せてやりたかったのにな」
私は心が血を流すようだった。もう聞いていられなかった。
テーブルクロスを握りしめ、カップのコーヒーが揺れるのも気にならなかった。
彼は私の腕をつかみ、顔を近づけてニヤリと笑った。
「こっそり写真を撮ろうとしたら、すぐ怒ってさ。何て言ったと思う?『本当に旦那さんのこと愛してるから』だってよ。ハハ!旦那を愛してるのにこんなことしてる。金に困ってるようにも見えないし、旦那がどれだけ無能ならこんな風にこそこそやるんだ?」
私はトレイをテーブルに叩きつけ、顔を歪めた。
ホテルの朝食会場のざわめきが一瞬止まったような気がした。
ハヤシは驚いて私を見た。
「おい、タクミ…」
私は冷たく背を向け、少し間を置いて振り返った。
「そうだな。もう二度と女に足を引っ張らせない」
心に決意が芽生え、これまでの人生が音を立てて崩れていくのを感じた。
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