第2話:ウサギのアイコンと焼きそばパン
私は頭を抱え、チャットに送られてきた新しい連絡先カードを見つめた。
「兄貴、本当に彼女がいいなら、これ追加してスケジュール聞いてみなよ。超人気だから、はは」
まるで、ふざけたような軽い口調。しかし、そのアイコンは、見覚えがありすぎた。
自分で描いたカップルアイコン——
妻が白ウサギ、私が大きな灰色オオカミ。
彼女が私の耳をかじり、私は彼女のつま先にキスをする——世界に一つだけのアイコンだ。
それを見て妻がどれだけ喜び、頬を赤らめて私の胸に飛び込んできたか、今でも鮮明に覚えている。
「私、タクミの目にはそんなに純粋で無垢に見えるの?タクミ、本当に優しいね」
私は彼女を抱きしめ、若い顔を輝かせて言った。
「もちろんだよ、アヤカ。君を心から愛してる。最高のものを全部あげたい」
今、その思い出が針のように、刃のように私の心を突き刺す。
胸が締め付けられ、思い出したくないのに、鮮やかに蘇る。
血が逆流し、視界がぼやけ、ついには血を吐きそうになった。
冷や汗が額をつたう。
震える手で友達申請を送り、どうか承認されませんようにと祈った。
あるいは、誰かに殴られてこの悪夢から目覚めたいとさえ思った。
ピンという音とともに、心が砕ける音が聞こえた。私は呆然と画面を見つめた。
「アヤカがあなたの友達申請を承認しました。チャットできます」
スマホを強く握りしめた手が、じっとりと汗ばんでいる。
私が描いた白ウサギのアイコンから、長いボイスメッセージが届いた。
「お兄ちゃん、どこにいるの?私はモミジホテルにいるよ。明日予約できるよ……」
私は飛び上がった——なぜなら、今まさにモミジホテルにいるからだ。
鳥肌が立ち、全身の筋肉が一瞬で硬直する。
スマホを握りしめ、慎重に返信した。
「俺もモミジにいる。部屋はどこ?」
それでも信じられなかった。自分の目で確かめ、説明を聞きたかった。
純粋で美しいアヤカが、そんな女のはずがない。
アカウントが乗っ取られたのだと信じたかった。アヤカが私を裏切り、他人に体を売るなんて、絶対に信じたくなかった。
スマホ画面に写る自分の顔が、ひどく老けて見えた。
その時、出前の電話が鳴った。
ホテルのロビーには、どこか懐かしい焼きそばパンの匂いが漂っていた。コンビニ袋のシャカシャカ音がロビーに響き、深夜の静けさの中、自販機の明かりがぼんやりと床を照らしている。
仕事のせいで一日何も食べていなかった。
この衝撃の後、力が抜け、ふらふらしながら下に降りて食事を受け取った。
レジ袋を握る手が震えていた。
部屋に戻る途中、なぜか彼女からの返信はなかった。
ふと前方を見ると、その姿に全身が震えた。
次の瞬間、運命が加速し始めるのを、私はまだ知らなかった。