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下着に仕掛けた復讐の夜 / 第5話:カプサイシンの復讐とSNSの炎
下着に仕掛けた復讐の夜

下着に仕掛けた復讐の夜

著者: 和田 智


第5話:カプサイシンの復讐とSNSの炎

寮のドアに着くと、菜穂の得意げな声が聞こえた。

「杉山先生から連絡きたよ。今度こそ美羽は処分確定!下手したら退学かも」

「菜穂、先生と仲良いんだね……」

沙良の声が急に小さくなった。

「えっと……前に頼んだ大学院の推薦の件なんだけど……」

「大丈夫、そんなの朝飯前よ」

なるほど、そういうことか。

前学期、私のGPAは菜穂より0.3高かったのに、奨学金は彼女が取った。キャンパスのスピーチコンテストでも私が一位だったのに、代表は彼女だった。今まで腑に落ちなかったことが、すべて繋がった。

でも今はそれどころじゃない。まずは変な奴を捕まえないと。毎日使い捨てパンティーなんてもううんざりだ。

私は楽天アプリを開いた。すると、ある商品が目に留まった。

【無色無臭高濃度カプサイシン、防犯必需品】

詳細をクリックすると、

【インド産ゴーストペッパー由来、10秒で効果発現、48時間持続】

これだ。

私はカスタマーサービスにメッセージを送った。

【本当に効きますか?】

すぐに返信が来た。

【ご安心ください〜純度99%のカプサイシンです〜象でも泣きます!】

完璧。

私は迷わず注文し、備考欄に太字で書いた。

【至急、厳重包装希望】

スマホの画面に反射する自分の顔は、今までにないほど真剣だった。

三日後、ついに荷物が届いた。私はほとんど駆け足で受け取りに行った。しかし受け取り所に入った途端、並んでいた学生たちは私を避けるように散り、口元を押さえてヒソヒソ話す者、スマホでこっそり写真を撮る者、鼻をつまんで後ずさりする者までいた。

どこかで誰かが「ヤバいよ、あの子……」とつぶやく声が聞こえた。噂は想像以上に広がっているらしい。

「3685番の荷物」

私はスマホを窓口に差し出した。配達員は顔色を青ざめさせ、指先でつまむように荷物をカウンターに置き、すぐにアルコールスプレーで自分を消毒した。

「何なの?」

私は荷物を落とさないように受け取った。配達員は唇を尖らせ、半歩下がった。

「さっさと持って行けよ。最悪だ、こんな奴に当たるなんて!」

「その態度、クレーム入れるからね!」

「クレーム?」

急に声を張り上げた。

「どうぞご自由に!あんたみたいな病気ばら撒く奴が触ったら、消毒して当然だろ?みんな、あんたの悪事はもう知ってるんだ!」

周囲のささやきが大きくなり、「掲示板」「パパ活」などの単語が耳に入る。

手が震えながら、私は大学の掲示板アプリを開いた。トップには固定されたスレッドがあった。

【確定:経済学部の高橋姓女子、金で体を売り梅毒をばら撒く】

投稿には私が前かがみで黒いクラウンの影に入る写真や、病院の前での盗撮、日常の服やバッグの値段リストまで載っていた……。

写真のアングルは異様に正確で、私の顔は鮮明なのに、他人の顔やナンバープレートはぼかされている。投稿者は明らかに強い相手には手を出さず、私のような“弱い”標的を選んでいる。

最悪なのはコメント欄だ。「内部情報」と称する書き込みが「毎週金曜に“納品”している」と断言し、すでにいいねが千を超えていた。

LINEグループにも「見てこれ」とURLが貼られ、既読が一気に増えていく。Twitterやインスタのストーリーでも、私の名前と一緒に「やばい」「近づかない方がいい」と拡散されていた。

私は鼻で笑い、スクリーンショットを撮って父にLINEでリンクを送った。

「お父さん、囲われてるのバレちゃった」

三秒後、父から電話がかかってきた。

電話口からは、最初は怒り混じりの声だったが、徐々に冷静さを取り戻していた。「美羽、お前、絶対に負けるなよ」と、父特有のぶっきらぼうな励ましが胸に響いた。

通話を終えた後、私は配達員にもクレームを入れた。

配達員の態度は硬かったが、私の目を見て少しだけたじろいだ。世間体ばかり気にする日本社会の、弱い者いじめの縮図だと思った。

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