第6話:カプサイシンの夜、寮に響く悲鳴
寮には誰もいなかった。私はベランダに出る。案の定、パンティーはまたあの生臭い臭いがしていた。
「しつこい奴め」
私は歯ぎしりしながら鼻で笑った。中傷された怒りが頂点に達し、もはや迷いは消えた。自分の物を消毒して何が悪い?
私は手袋をはめ、カプサイシンを水に溶かしてパンティーを浸し、しばらくして一枚ずつ絞り、さらにカプサイシンを丁寧に塗り重ねた。香水を吹きかけ、いつも通りベランダに干した。
夕焼けに染まる校舎の窓、遠くで聞こえる部活の掛け声、近所のスーパーのチラシがポストに挟まる音。日本の学生寮らしい日常の風景に包まれながら、私は手早く作業を終え、ベランダから見える夕焼け空をぼんやりと眺めた。風がカーテンを揺らし、どこか遠くの神社の鐘の音が聞こえた気がした。
すべて終えると、ベッドにもぐりこんで昼寝した。
久々に深く眠れた気がした。夢の中で、小学校時代の友達と無邪気に笑っていた自分がいた。
夕方になり、ルームメイトたちが帰ってきた。菜穂の声が弾んでいる。
「彼女のバッグ、限定品で何十万もするらしいよ。何人のオヤジと寝たんだか。今、金持ちのオヤジが女子大生を取り合うのが流行ってるんだって」
沙良が戸惑いがちに言う。
「でも、家族からもらった可能性もあるんじゃ……」
「そんなわけないでしょ」
菜穂の笑い声は耳障りだった。
「先週、彼女がハゲのオヤジが運転するレクサスから降りるの見たよ。梅毒の二期は顔が崩れるんだって。みんな、彼女には近づかない方がいいよ」
私はベッドのカーテンをバッと開けた。菜穂は飛び上がって叫んだ。
「い、いつからいたの?」
私はスマホの録音アプリを見せた。
「証拠はバッチリ。名誉毀損で訴えられるわよ」
菜穂の顔が真っ赤になった。
「事実を言っただけ!訴えれば?誰が信じるか——」
沙良が彼女の腕を引っ張った。
「もうやめて」
私は二人を無視し、カーテンを閉めて寝返りを打った。これから本番だ。変な奴が現れる時のために体力を温存しないと。
ベッドの下から、猫のように小さく丸まって気配を消した。夜に備えて、深く深呼吸した。
午前二時、寮全体が静まり返っていた。私はぐっすり眠っていた。
静かな夜の帳の中で、遠くからわずかに時計の針が刻む音が聞こえる。誰もが眠りに落ちている時間だ。
突然、血の気も引くような悲鳴が響いた。
私は飛び起きた。
まさか——
本当に変な奴が現れたのか?
寮の明かりがパッとついた。
廊下に響く慌ただしい足音。何が起きたのか、胸が高鳴り、私はそっとベッドから降りた。
廊下の向こうで誰かが泣いている。私は息を殺して、ゆっくりとドアノブに手をかけた——
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