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裏切りの妃と春の夜 / 第1話:弾幕の中の決断
裏切りの妃と春の夜

裏切りの妃と春の夜

著者: 藤井 雪乃


第1話:弾幕の中の決断

私が天皇の位に就いたその朝、白檀の机に手を置き、畳の香りと障子越しの春の日差し、庭からほのかに梅の香が漂う中、私は侍従に皇后廃位の詔を読み上げさせ、園子妃を新たな皇后に立てようとした——その時、突如、奇妙な弾幕※が空中に現れた。

※弾幕:動画や画面上にリアルタイムで流れる視聴者コメント。日本のニコニコ動画などで人気。

【マジでクズ竜、目腐ってんじゃんw 皇后めっちゃ良い人なのに大事にしないし、外戚一族皆殺しとか終わってる。来年北の蛮族来たら、誰が国守るの?見ものだわw】

【園子みたいな女がタイプとか…あーはいはい、この時点じゃ妃の腹の子が自分の子じゃないって知らんのか。草】

【悪役とはいえ、主人公の息子を皇太子にしたのは評価する。でも死後に遺体まで鞭打たれるのは流石に哀れだろw】

思わず、私は白檀の机に手を強く突いた。手が震え、隣の侍従から詔書を奪い取るようにひったくった。文武百官の視線が集まる中、私は険しい表情で宣言する——

「朕の体調がすぐれぬ。本日の朝議はこれまでとする」

普段なら、どれほど心が乱れても顔色一つ変えずにいられた。だが、あの不可思議な弾幕に心を乱され、声にも無意識に力が入っていた。朝議を満たしていた緊張感が、一気に冷めていくのが肌で分かる。

この章はここまで

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