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牢獄で出会った運命の人 / 第1話:絶望の転生、牢獄の始まり
牢獄で出会った運命の人

牢獄で出会った運命の人

著者: 森下 慎


第1話:絶望の転生、牢獄の始まり

私の転生はなんて苦い運命だろう。

——普通のOLだった私が、なぜこんな目に遭うのか。二十九歳、平凡な人生を送ってきたはずなのに、今や江戸時代の牢獄で息をひそめている。唇を噛みしめ、諦めきれない悔しさと運命への静かな反抗心を胸に、私は牢の湿った空気を吸い込んだ。

他の人は華やかに新しい人生へと転生するのに、私だけは死刑囚の牢屋。顔色は悪く、やせ細った罪人奴隷として、秋の判決を待つだけの日々。

——ここは、江戸の牢獄なのか、それともそれ以前のどこかだろうか。薄暗い石壁と、畳も敷かれない冷たい地面。足元の土は湿って冷たく、藁はチクチクと肌を刺す。牢の奥からは遠い鐘の音がかすかに響き、現実感がじわじわと押し寄せてくる。まるで時代劇の中に迷い込んだようだ。

酸っぱい漬物を食べ、藁の上で眠る。四十九日間、闇と孤独に耐え、ネズミやゴキブリが走り回る音に気が狂いそうになった。

——牢の天井からしずくがぽたりと落ち、湿気が体にまとわりつく。漬物の酸っぱさは子どもの頃、祖母が作ってくれた梅干しを思い出させるけれど、今はただ喉を焼くだけ。夜は藁の冷たさに震え、耳元ではネズミがちゅうちゅう鳴き、ゴキブリのカサカサ音が背筋を凍らせる。

五十日目、何人かの看守が血まみれの男を引きずり込んできた。

——雨の匂いが牢内に立ち込め、どこか遠くで雷が鳴る。看守の足音が近づくたび、囚人たちは息を殺す。私も拳を握りしめて、無意識に身を固くした。

久しぶりに人の気配に胸が高鳴った。子どもの頃、遠足で友だちを見つけた時のように、心が躍った。

——思わず声が漏れる。他人の存在は恐怖よりも、希望に近かった。まるで初めて遊園地に連れて行ってもらった子どものような、浮き立つ気持ち。

「あの……どこから来たんですか?少しだけでも、話してもいいですか?」

——声が自然と上ずる。自分でも驚くほど必死で明るい調子。どんな人かも分からないけれど、生きた人の温もりをどうしても感じたかった。

この章はここまで

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