第4話:星降る大丸杭の夜
大丸杭の側面には、古びた麻縄が垂れ下がっていた。従兄は慣れた手つきでロープ梯子を下ろし、みんなで引っ張り合いながら登っていった。
テントを張り、焚き火を起こして休憩。火がパチパチとはぜる音、澄んだ空気に焚き火の煙がまっすぐ昇る。缶詰のサバを温め、みんなで回し食いする。日本の山ならではの情景が広がる。
夜が更け、闇がすべてを飲み込む。遠くのフクロウの鳴き声、星明りだけが世界の輪郭を照らしていた。
頭上には無数の星。星座早見盤やスマホアプリで星を探す女性たち、焚き火のパチパチ音、夜風で揺れるテントの影。星の多さ、輝き、密度、その眩さは人生すらちっぽけに思えるほどだった。
「お前、まだ童貞だろ?」と従兄が隣に座り、ワンカップの日本酒を差し出す。不意打ちの問いに赤面し、「何言ってんだよ」と慌てて断る。
「大丈夫、無理に飲まなくてもいい」と従兄が苦笑いし、肩に手を回して耳打ちする。「今夜何があっても、見ても聞いても、何もなかったふりをしろよ」
夜風が肌を撫で、遠くで鹿の鳴き声が響く。緊張感が高まる中、「目で見て肌で感じろ」と従兄の声が心に残る。
「分かった……誓うよ」と約束し、従兄は満足げにうなずき、男たちの輪へ戻っていった。
反対側では女性たちが寝転び、沙織が星座を指差し、エリが英語で解説。真理子が温かい紅茶を配り、美咲は流れ星に願いをかける。焚き火の温もり、星降る夜、誰もが素直になれる時間だった。
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