第6話:最後の証言
悩んだ末、私は川島の名誉を回復することが唯一の方法だと考えました。無実の人間なら、そう簡単に悪事を働くことはないはずです。
「間違いは正さなくてはならない」と、自分に言い聞かせました。法の番人として、そして父親としての矜持が、私の背中を押しました。
まず、他の四人の女の子の親に連絡し、一緒に裁判所で証言してほしいと頼みました。
電話の向こうで、親たちは「今さら無理」「うちの子が傷つく」と口を揃えて拒否しました。
しかし、全員に断られました。理由は二つ。まず、訴訟が仕事に影響するのが怖いこと。次に、どうせ川島は私たちを許さないだろうから、何も得るものがないということでした。
「私たちだって、家族を守りたい」と泣きながら訴える親もいました。その声を聞くと、私も胸が苦しくなりました。
春子さんは亡くなり、川島の元弁護士もすでに姿を消していたので、私は自ら弁護人となり、拘置所で川島に面会しました。
拘置所の小さな面会室で、私は何度も頭を下げました。川島さんは無言で私を見つめていました。
川島はすっかり変わり果てていました。かつてふくよかだった体はやせ細り、目は落ちくぼみ、優しかった顔つきも陰気で怖ろしいものになっていました。
白髪が目立ち、手も震えていました。その姿に胸が痛みました。
私は謝罪しましたが、川島は鼻で笑いました。しかし、名誉回復のために力を貸すと言うと、ようやく表情が和らぎました。
「そんなことしても、もう遅いですよ」と呟きながらも、「母のために、最後まで戦いたい」と言いました。
川島は「出所したらまず母の葬儀を済ませ、無実が証明されたことを伝え、安心させたい。その後は小さなトラックを買って北海道でじゃがいもを運び、鹿児島でみかんを運ぶ。どこへでも行く、二度と戻ってこない」と語りました。
「もうこの町には戻りません」と静かに言いました。私は、せめて川島さんの願いがかなうことを祈るばかりでした。
私はほっとしました。刑務所は人を変えるものですが、川島にはまだ良心が残っていました。それはとても貴重なことです。
面会室を出るとき、私は川島の目をまっすぐ見つめ、「必ず真実を明らかにします」と誓いました。
控訴審で判決を覆すカギは、理奈の証言にあると私は分かっていました。他の四人が協力しなくても、理奈が証言を翻せば、裁判所も被害者の供述の信ぴょう性を再検討せざるを得ません。
「理奈、もう一度勇気を出してくれ」と、私は何度も繰り返し語りかけました。
私は何度も理奈に「正しいことをするのに遅すぎることはない。勇気を持って真実を話しなさい。パパは絶対に味方だよ」と言い聞かせました。
理奈はうつむきながらも、ゆっくりとうなずきました。小さな声で「分かった」と答えました。
理奈はうなずき、「もう二度と嘘はつかない」と約束しました。
「絶対に約束する」と、自分の胸に手を当てて、まっすぐに私を見つめていました。
そして控訴審当日、私は理奈を連れて法廷に向かいました。
裁判所の廊下は静まり返り、理奈の足音だけが響いていました。私はそっと手を握りました。
尋問で主任検事が理奈に尋ねました。「あなたは川島さんに痴漢されたのですか?」
法廷の時計の針がやけに大きく響き、誰も咳払いひとつしません。理奈は、ためらうことなくうなずきました。「はい。」
私は呆然とし、椅子に座ったまま動けませんでした。法廷の空気は張り詰め、誰もが理奈の答えを信じて疑いませんでした。
(その瞬間、私は何もかもを見失ってしまったのです——)
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