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妻は裏切りの淫らな獣 / 第6話:終焉の桜と新たな夜明け
妻は裏切りの淫らな獣

妻は裏切りの淫らな獣

著者: 清水 朱音


第6話:終焉の桜と新たな夜明け

シャワーを浴び終えると、部屋には食事の匂いが漂っていた。

アヤカはネグリジェを脱ぎ、昨夜と同じワンピースに着替えていた。

私は気分が悪くなり、彼女の手を避けて自室に戻ったふりをした。

「あなたの好きな料理を作ったよ。食べてみて」

しじみの味噌汁の湯気が立ちのぼり、テーブルには桜餅と玉子焼きの懐かしい甘い匂いが漂っていた。

アヤカはそのワンピースをふわりと着こなし、髪はゆるく巻いて、耳元には小さなパールのピアスが揺れている。私は思わずその姿を細かく観察してしまい、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。

「見て!これ、あなたが買ってくれたドレスだよ。アヤカ大好き。あなたが一番に見てくれた——嬉しい?」

内心、私は冷笑した。

昨夜、ハヤシの体液がそのドレスに付いているかもしれない。

そう思うと食欲が失せ、箸で少しつまむだけだった。

「出かけないの?」

アヤカは大きな目で私を見つめた。

「出かけないよ。タクミが一番大事。アヤカはあなたのもの——体も心も全部あなたのもの」

私は吐き気を催し、思わず嘔吐した。

アヤカは驚き、慌てて私の吐瀉物を手で受け止めようとし、心配そうに涙ぐんだ。

「あなた、大丈夫?私の料理が悪かったの?」

私はもう彼女の嘘に耐えられず、争う気もなかったので、コンビニ弁当の食べ過ぎで胃を壊したふりをして彼女を遠ざけた。

アヤカは傷ついた顔で、涙をぽろぽろ流した。

雨に濡れた桜の花のように美しいが、中身は腐っていた。もう私の愛を受ける資格はない。

「あなた、頑張ってるから、アヤカがしっかり看病するね」

私は何も言わず、サブアカからネットで拾ったシックスパックの写真を送った。

ピン!アヤカのスマホが鳴った。

彼女は画面を見て頬を赤らめ、無意識に体をくねらせた。

「お兄ちゃん、カッコいい。筋肉が硬くて…ドキドキしちゃう」

私の目の前で、他の男に色目を使うことが信じられなかった。

自分がまだここにいることに気づいた彼女は、慌てて指先をいじりながら言った。

「今日は女友達の誕生日なの。少しだけ一緒にいてもいい?暗くなる前には帰るから」

テーブルの下で、私は拳を握りしめ、苦しみで手の甲が白くなった。

……

十年——あの頃、私は高給の仕事を捨てて日本に残り、アヤカと一緒になることを選んだ。

薄暗い部屋で、二人でカップラーメンをすすった夜のことを思い出す。

皆の反対を押し切り、卒業後すぐにプロポーズした。

真実の愛を見つけたと思っていたのに、彼女の心の中では、道端の男でさえ私より大事だったのだ。

化粧をして出かける彼女を見て、私は心の中で決意した。

アヤカ、もう本当に終わりだ。

……

彼女が出かけた後、私は悲しむ暇もなく、もっと大事なことをしに病院へ向かった。

アヤカがいつからこんなことをしていたのか分からない。最近はセックスも減っていたが、一ヶ月前にはまだ関係があり、避妊もしていなかった。

結果を待つ間は生きた心地がしなかったが、幸いにも何も問題はなかった。

私は深いため息をつき、ようやく安堵した。

その間も、アヤカからは誘惑的な写真が次々と送られてきた。

「お兄ちゃん、いつ来るの?会いたいな」

その写真は誰が見ても目を背けたくなるものだった。

私はアヤカをブロックし、ようやく吹っ切れた。

そして海外に行く準備を始めた。

今回は全てを整理した。

彼女のSNSを通じて、見知らぬ男たちを自宅に連れ込み、私たちのマンションを売春宿に変えていることも知った。

もう我慢できず、引っ越した。

家は結婚前に購入したものなので、すぐに不動産業者に売却を依頼した。

担当者との電話で、淡々と手続きを進めた。

その間も、アヤカからは何度もメッセージが届いた。

「タクミ、友達が急用で帰ったから今家にいるよ。どこにいるの?家で待ってるね」

「タクミ、どうして?なんで知らない人が家を見に来るの?怖いよ、いつ帰ってくるの?」

「タクミ、どうして返信くれないの?何かあったの?」

私は資産整理や手続きで忙しくしていた。

ようやく全てが終わった頃、ハヤシから怒りの電話がかかってきた。

「タクミ、お前何考えてんだ?なんで俺の海外行きのチャンスを奪った?俺は許さないぞ、ちゃんと補償しろ」

「俺はお前を親友だと思ってたのに——お前の目を覚まさせてやったのに——裏切るのか?」

私は鼻で笑った。そのチャンスはもともと私のものだ。今さら文句を言う資格はない。

「心配するな、ハヤシ。お前にプレゼントを用意した。送る住所に行けば、サプライズがあるぞ」

ハヤシは笑った。

「さすがだな、期待してるぜ」

アヤカは家で不安げにウロウロしていたが、外に探しに行こうとしたその時、チャイムが鳴った。

笑顔でドアを開けると、そこにいたのはハヤシの豚のような顔だった。彼女の表情は一瞬で凍りついた。

「な、なんであなたが…?」

雨上がりの玄関先、アヤカの足元には、私が贈ったばかりのスリッパが寂しそうに転がっていた。

アヤカは一瞬だけ涙をこらえたように唇を噛み、顔をそむける。その横で、ハヤシは不敵な笑みを浮かべていた。全てが終わった。

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