第6話:離婚へのカウントダウン
それから紫苑はさらに手が付けられなくなった。いじめが原因で複数の親が家に怒鳴り込んできた。美咲は慌てて私に電話してきた——
「あなた、何人もの親が来て、紫苑が自分の子をいじめたって。早く帰ってきて!もう殴られそうよ!」
美咲の声が受話器越しに裏返る。家の玄関に、知らない靴がいくつも並んでいる光景が目に浮かぶ。
私は鼻で笑った。紫苑を甘やかすのが好きなら、自分で責任を取ればいい。
「今忙しい。行けない」
「家族より大事な用事なんてある?あなたの稼ぐ小銭なんて何の役に立つの?」
私は笑った。
「その小銭が嫌なら、兄貴に渡すのもやめたら?」
美咲は激昂した。
「どういう意味よ?」
「そのままの意味だ」
美咲は本当に親たちに脅されたのか、もうお金のことは言い返さず、必死で詰め寄った——
「帰ってくるの?来ないの?」
もちろん、私の答えは「行かない」だ。
美咲は追い詰められて叫んだ——
「あと三十分待つ。帰ってこなかったら離婚よ!」
「いいよ。離婚しよう」
「脅してるの?譲歩するつもりはないからね…え、ほんとに離婚したいの?」
美咲の動揺が電話越しにも伝わる。薄曇りの窓の外、雨のしずくがゆっくりとガラスを滑り落ちていった。玄関チャイムの音が遠く響いた。もう戻る場所はない、と悟った。
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