終わりのない後宮で、ただ一人魂を待つ
小さな丸薬を飲み続ける日々、私は自分の心を閉ざし、後宮の静かな水面を生きてきた。世界を自在に巻き戻す“プレイヤー”明里の指先で、私たちの運命も、愛も、痛みも、何度でもやり直される。全てが数値化され、思い通りに書き換えられる中、私はただ“攻略できないNPC”として、彼女の興味の灯が消えぬように静かに歩き続ける。兄との約束も、愛も、母が与えた名前の意味すら、薄い膜の向こうに揺れている。やがて明里がこの世界を去ったとき、私は初めて“魂”という名もない震えを知る。それは、本当に終わりなのだろうか。