
共通テストが終わった春、約束していた横浜への小さな旅は、叶わぬ夢に変わった。三年間、秘密の恋を育んだ悟は、裏切りと別れの痛みに沈みながらも、卒業パーティーで交差する友人たちの思いに触れていく。誰にも言えなかった想い、届かなかった優しさ、すれ違いの中で見つめ直す自分自身。夜の海風とピアノの音色のなか、幼い日の記憶がふいに蘇る。あの時守られた“キラキラひかる”の歌声は、今も心に残っているのだろうか。

雨音が静かに響く夜、私はかつて救ったはずの彼女と、すれ違い続けていた。結婚という約束のもとで隣り合う日々も、元主人公の帰還をきっかけに、次第に心の距離が広がっていく。信じたい気持ちと、消えない疑念。思い出も、愛も、記憶の波に飲まれていく中で、私はこの世界に残る意味を見失ってしまった。すべてを忘れてしまう前に、本当に伝えたかったことは何だったのだろう。二人の始まりと終わりは、雨の中に溶けてしまったのかもしれない。