
雪深い篝木村で生まれた姉・紗世は、顔に大きな痣を持ち、村人からも家族からも疎まれていた。母の冷たい仕打ちと、村の古い因習の中で、彼女は静かに絶望に沈んでいく。唯一の救いは、弟・蓮の存在だけ。しかし、ある夜の出来事をきっかけに、紗世の運命も村の静寂も音を立てて崩れていく。復讐と愛、憎悪と祈りが交錯する中、蓮は何を選び、何を断ち切るのか。すべてが終わった時、雪の下に残るものは、果たして赦しなのだろうか。

初めての大晦日、夫・健太と共に佐伯家へ帰省した玲華。親族の集まりで、姑・富子やその姉・芳江から押し付けられる「しきたり」と、地方特有の空気に戸惑いながらも、玲華は自分の家系と記録へのこだわりで静かに対抗する。証拠を積み重ね、感情に流されず淡々と事実を示す玲華の姿は、やがて家族の空気を変えていく。年越しの騒動と朝の雑煮作りのなか、互いの距離が少しずつ揺れ動く。紙袋の温度や紅白歌合戦の音が、静かな年の終わりを照らす。二人の時間は、これからどこへ向かうのだろうか。

雪に閉ざされた久那坂村。澤渡家の娘・花は、母・陽子が村に「外」から連れて来られた女性であることを幼い頃から知っていた。母は村の因習と暴力に耐え、やがて家族も村人も巻き込む静かな復讐へと歩み始める。十八年分の傷と沈黙、母娘の間に流れる言葉にならない絆。最後に母を抱きしめ、花は自分自身の選択を下す。過去と決別したその先に、微かな春の光は差し込むのだろうか。

父に囚われ、道具のように扱われた山姫と、その娘ミユキの絶望と復讐の物語。母を失い、村の男たちの欲望と呪いの渦に巻き込まれるミユキは、母の魂を救うため、そして村に報いをもたらすために立ち上がる。禁断の血と欲望が交錯する、和風怪談の決定版。