冬の港に影が落ちて、春の光が射すとき
形だけの結婚生活に終止符を打つ日、静かな丘の街に冬の気配が忍び寄る。幼なじみとして二十年寄り添った小雪との別れは、静かで痛みを伴うものだった。湊は母の看病や離婚の現実に揺れながらも、自分を大切にしてくれるひよりの温かさに少しずつ心を解かれていく。すれ違い、諦め、そしてようやく訪れた新しい愛のかたち。遠ざかる影と、差し込む光。そのどちらも胸に残したまま、湊は静かに歩き出す。
本当に、大切なものはどこにあったのだろうか。今度こそ、自分の幸せを信じていいのだろうか。