
離婚届に判を押した朝、私の世界は静かに終わるはずだった。けれど翌日、元夫・神条司と愛犬モコの魂が入れ替わり、常識は裏切られたまま、再び奇妙な日常が始まる。芸能界の渦とSNSの炎上、清純派女優の裏の顔、すれ違う愛と小さな誤解――それぞれの孤独が、犬と人間の不器用な会話に溶けていく。あの日失った温もりは、もう二度と戻らないのだろうか。けれど、春の光のような誰かの優しさが、心の扉をそっと開けてくれるかもしれない。

港区と下町の境界で、私は西園寺グループ御曹司・珀と体が入れ替わった。芸能界の毒舌と借金、リアリティーショーの喧騒に揉まれながら、互いの孤独と優しさに触れていく。罵倒と涙の狭間で、少しずつ本音が溢れ出す日々。やがて工場の再建と新たな事業を通して、二人の絆は変化し始める。春の光の中、どこか不器用なプロポーズが訪れ、港区の夜は眩しく染まった。心の痛みを分け合いながら、ふたりは本当に“結ばれた”のだろうか。