Chapter 7: 第7話:はじめての抱擁と本音の告白
「寝室に運んだらどう?書斎は寒いわ」
「いい。私は書斎で休むのが慣れている」彼はいつもの癖を守った。
「じゃあ荷物を片付けるのを手伝うわ」
「いい」短い拒絶は、傷より小さく、けれど確かだった。
「じゃあ部屋の掃除をするわ!」
私は前に回り込もうとしたが、足を滑らせて転びそうになり、柊征二が素早く支えたが、すぐに手を離した。触れた熱が、すぐに空気に溶けた。
彼は私を見て、唇を引き締め、感情を抑えきれなくなった。
「小夜子」
墨のような瞳で私を見つめ、声が震えていた。「何かしてほしいことがあれば言ってくれ。私は君のために何でもする。だから、そんなに自分を犠牲にしなくていい」不器用な優しさが、言葉を固くした。
私は言葉を失った。
彼は本気だった。私の心を守るためなら、自分を疑ってでも受け止めようとしている。
私が突然優しくなったのを信じられず、むしろ何か利用しようとしているのだと思っている。私の過去が、今を汚していた。
結局、私が今まで彼にあまりにも冷たかったからだ。心の借金は、返すのが難しい。
千代と平安が食事の支度をしている間、私は書斎の前に立ち、彼が荷物を整理するのを見ていた。背中にかかる上着が薄く、肩の線が細かった。
私はため息をつき、人生はなんて難しいのだろうと思った。言葉ひとつが橋にも壁にもなる。
生まれ変わって父の冤罪を晴らそうとしても、一か月経っても進展せず、柊征二に優しくしようとしても、再会早々失敗した。足並みが揃わないのは、私のせいだ。
私は目を赤くして、書斎の前で泣いた。柊征二を見つめ、何も言わず、どこにも行かなかった。涙が頬の冷たさを忘れさせた。
柊征二は仕方なく近づいてきた。「泣くなよ。こんなに寒いのに、風邪をひいたらどうする」言葉は拙く、優しさは真っ直ぐだった。
私は彼の胸に飛び込んだ。「寒さを心配してくれるなら、そんなに冷たくしないでよ。いっそ外で凍え死なせてくれたらいいのに!」自分でも困るほど、子供じみた訴えだった。
彼は体を強張らせ、心臓が跳ね上がったが、どうしたらいいか分からなかった。手が宙に迷い、私の背にたどり着いた。
私たちは一度も肌を重ねたことがなく、彼も戸惑っていた。未知は誰にとっても怖い。
「私は、どこが冷たい?」彼の声は震えていた。自分を責める癖が、声を細くした。
「十分冷たいわ。何もかも断って、私の気遣いなんて見向きもしない。思い込みばかりして!」
私は彼を強く抱きしめ、真剣に言った。「征二さん、私、考え直したの。これからはあなたと仲良くしたい。今まで冷たくしてごめんなさい。もう二度としない。私たち、仲良く暮らそう?」胸の奥から出た言葉は、ようやく彼に向いた。
彼は呆然と私を見つめ、まだ信じていないようだった。信じるには、時間が要る。
だが最後には、私の言葉に心を動かされた。
たとえこの先がどれほど危なっかしく見えても、一度は踏み出してみたくなるものだ。彼となら、その一歩を信じてみてもいいと思えた。
「……ああ」
「じゃあ、抱きしめて?」
「……ああ」
彼の温かい手がぎこちなく私の背に回り、私は彼の表情は見えなかったが、手がそっと私を抱きしめた。抱擁は不器用でも、温度は確かだった。
私は彼の胸でこっそり笑った。
やっぱり、この手は効く。近づけば、分かり合える。










