Chapter 6: 第6話:早すぎる帰還とすれ違う心
ふと見ると、千代が雪の中を駆けてきて叫んだ。「お嬢様!柊様が帰ってきました!」頬が真っ赤で、目が光っていた。
家に戻ると、柊征二たちはすでに門前にいた。
吹雪の中、白馬にまたがり、凛とした姿だったが、従者は一人だけで寂しげだった。肩に積もる雪を払う仕草まで、静謐だった。
私は申し訳なくなった。私と結婚しなければ、彼はすでに出世街道を歩み、従者も大勢いたはずだ。私の選択が、彼の道を狭めた。
「征二さん」私は足を止め、微笑んで呼んだ。声が少し震えた。
柊征二は振り返り、私を見ると一瞬驚いたが、すぐに抑えて馬を降り、手綱を握って控えめに「帰った」と言った。言葉は短いが、帰る場所への安堵が滲んでいた。
私たちは向き合い、まるで他人のようだった。距離は近いのに、心の間に雪が降っている。
彼が帰ったら優しくしよう、抱きしめて冷えた手を温めてあげよう、会いたかったと伝えようと決めていたのに、いざとなると緊張してしまった。鼓動が耳元でうるさい。
私の手紙を見てくれただろうか?彼はあまり嬉しそうじゃない。私の八文字は、届いたのだろうか。
自信がなくなったが、笑顔を作って近づいた。「今年はどうしてこんなに早く帰ってきたの?」
「北方は無事だから、早めに帰った」と彼は言った。言葉の下に、急いだ理由が隠れている。
そして手綱を握る手を強くし、「君が早く帰れと手紙を書いたから、家に何かあったのか?」と尋ねた。
私ははっとした。
彼がそう思うのも無理はない。
今まで私は彼に優しくしたことがなく、手紙も返さなかった。だから彼は、私が手紙を書き、防寒着を送ったのは家に何かあったからだと思ったのだ。私の変化には、理由が必要だった。
「違うわ」
私は彼を見つめ、心から言った。「あなたに会いたかったから」言葉は、息より温かかった。
彼の手が止まり、明らかに動揺したが、すぐに冷静さを取り戻した。目の奥が一瞬だけほどけた。
しばらく黙ってから、彼は私を見て寂しげに言った。「そうか。でも、君はさっき久我家から帰ったばかりだね。夫人は二年も仏道に励み、今日だけ昔の華やかな衣を着て、彼に会いに行ったんだ」語尾に、少し棘があった。
私は一瞬、頭が真っ白になった。
前世、私は毎日仏壇に手を合わせ、着飾ることもなかった。今世は前向きに生きようとおしゃれしたのに、彼に誤解された。意地が、私の足を引いた。
私は慌てて説明した。「違う、彼に会うためじゃないわ。彼に会いに行ったのは……」
事件記録の話など簡単に言えるものではない。私は焦って、「彼にお金を貸していたから、取り立てに行ったの」とごまかした。自分でも無理があると思う説明だった。
無理のある言い訳だ。彼は信じず、目をそらし、失望したようだった。瞳の色が沈んでいくのが分かった。
「そうか」
彼はすぐに感情を引きはがし、淡々と「そういうことなら」と言って従者に「平安、荷物を書斎に運べ」と命じた。声は硬く、少し遠かった。
私は戸惑いながら彼の後ろ姿を見送った。背に積もる雪が、やけに白く目に残った。
千代は心配して「柊様はどうしたんでしょう」と呟いた。
私は気を取り直し、追いかけて彼を止めた。










