Chapter 16: 第16話:官舎への昇進とささやかな永遠
柊征二は帝都で昇進し、二年後、高等文官の中でも上位の者に与えられる政府高官用の大きな官舎に移ることになった。赤煉瓦の外壁にガス灯が並び、広い庭に雪が柔らかく降り積もる。
引っ越しの日、彼は私を抱きしめて静かに言った。「小夜子、君に幸せな日々を送らせると約束した。絶対に守る。これからもっと幸せになる」言葉は、家よりも大きな約束だった。
私は首を振った。
「私にとっては、家族みんなが一緒に過ごす毎日が、すべて幸せよ」広さより、温度が大事だ。
軒先の燕が賑やかに鳴き、まるでこれからもずっと幸せな日々が続くと言っているようだった。春の兆しが、私たちの肩に止まった。
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