雪解けを待つふたり、帝都の灯が揺れる夜に / Chapter 15: 第15話:悪夢としての前世と永遠の誓い
雪解けを待つふたり、帝都の灯が揺れる夜に

雪解けを待つふたり、帝都の灯が揺れる夜に

著者: 岡本 圭


Chapter 15: 第15話:悪夢としての前世と永遠の誓い

私の生活は元通り平穏になった。

毎日、父母に付き添い、柊征二のために衣服や靴下を作った。針の音が、心の雑音を消してくれる。

他の人が妻の手作りの服を持つなら、彼にも当然作ってあげなければ。公平は、小さなところから。

私は裁縫が得意で、私の作るものは宮内庁の女官も敵わなかった。糸の張り、布の落ち感、こだわりは手に宿る。

柊征二は数日ごとに手紙をくれ、北方での出来事を語り、時には野花や草を同封してくれた。電報では伝えられない香りや色を、紙に挟んでくる。

私が返事を少なく遅く書くので、彼は何度も文句を言った。文句もまた、甘さだった。

二年後、北方での任期が終わり、帝都に戻った。

戻った最初の月は、私は歩くのもおぼつかなかった。幸せは眩しく、足取りをふらつかせる。

数年たっても、毎日一緒にいても、彼は時々「昔は返事が少なかった」と言って、夜はとことん私を甘やかした。あきれるほどの執念深さが、妙に愛しかった。

ある夜、彼は突然目を覚まし、荒い息で涙を流した。

彼は私を抱きしめ、震えながら言った。「小夜子、君がいてくれてよかった。もう二度と会えないかと思った!」

「どうしたの?」

彼は私の顔を両手で包み、苦しげに言った。「夢を見たんだ。君は僕を嫌い、顔も見たくないと言い、何をしても近づけなかった。北に行っても手紙を送り続け、君が一度でも心を寄せてくれればと願った。でも、君は返事もくれなかった……」

私は呆然と彼を見つめ、「それで?」

「その後、君は何も言わずに毒をあおいで自殺し、最後の別れもさせてくれなかった……小夜子、そんなことしないで、もう僕から離れないで」

彼は私を強く抱きしめ、手が震えていた。夢の中の凍える夜が、彼の肌にまだ残っていた。

彼の夢は、まさに前世の私たちだった。何の因果か、こんなことまで夢に見るなんて。記憶は、時に夢の形で溢れる。

私は彼の顔を両手で包み、真剣に言った。「征二さん、見て、私は元気よ。二人とも幸せでしょう?私は長生きして、絶対に離れない。あなたが追い出しても、私は行かない」

彼は私を見つめ、やがて安堵し、私の肩に頭を預けてほっと笑った。「僕が追い出すわけないだろう」

「分かってる」

前世のことは、もう二度と繰り返さない。私たちは、同じ冬に捕まらない。

……

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