Chapter 13: 第13話:烏丸伯爵と禁断の策謀
「君がこの前、証人たちと料亭の関係を見つけたと言っていたが、その料亭の裏の主人は荘という姓で、多くの貴族と取引がある。彼の従兄は烏丸伯爵家の家令で、二人は烏丸の手先だ。君の父はかつて烏丸伯爵を弾劾した。黒幕は明らかだ」
「烏丸伯爵?烏丸家のあの人?」
私は驚いた。
烏丸伯爵は皇室の縁戚で、帝都でも権勢を誇る大臣だ。まさか父を陥れたのがこんな大物だったとは。背筋に冷たいものが走った。
私は拳を握り、「権力者でも関係ない。父は冤罪だ。必ず潔白を証明してみせる!」
「落ち着け、小夜子」
柊征二は低く言った。「烏丸伯爵は権勢を誇り、君と私だけでは太刀打ちできない。君の父も自分が冤罪だと分かっていたのに、なぜ自白し、訴えなかった?烏丸伯爵には逆らえなかったからだ。証拠を見つけても訴える場がない。帝都中どこも彼の勢力下で、誰も裁けない。
この帝国でただ一人だけ、彼を本気で動かせる人物がいる。
烏丸伯爵の栄達は、もともとその人物が特に目をかけてきたからこそ成り立っている」
私はすぐに気づいた。「あの方?」
柊征二は頷いた。
「だが、あの方が気にされるのは情ではない。政体の安定と家の面目だ。もし烏丸伯爵の不正の証拠が野党や新聞社の手に渡り、公になれば、内閣を揺るがす大疑獄になる。あの方は、自らが目をかけた一門の不始末で国中の非難を浴びることを何より嫌われるはずだ。だからこそ、その前に自ら烏丸を切り捨て、『身内の汚点は自分の手で始末した』という形を取らざるを得なくなる……そう追い込めるだけの証拠が要る」
「分かった」
烏丸伯爵は特に目をかけられているが、直接訴えれば逆に報復される。だが、裏切りと不正の証拠を掴み、世に出す構えを見せれば状況は変わる。標的は罪そのものだけでなく、家の面目を揺るがす醜聞だ。
私は父を救うには、まず烏丸伯爵を倒さなければならない。そのために必要なのは、烏丸伯爵が主君を欺き、国を揺るがすような疑惑に関わった証拠だ。道は険しいが、一本だけ真っ直ぐだ。
一晩相談し、明確な計画が立った。紙の上で道筋が形になった。










