Chapter 11: 第11話:新年の来訪者と極秘事件記録
私は家で待った。しばらくすると、誰かが戸を叩いた。
「はいはい!早いわね!」
私は千代を押しのけて嬉々として戸を開けた。
現れたのは久我樹だった。
彼は黒い外套で頭から足まで覆い、目だけ出して、まるで誰かに見つかるのを恐れているようだった。肩から落ちる雪が、黒を白くした。
「何しに来たの?」
「新年の挨拶だ。礼には礼を」
珍しいことだ。
私は訝しみながら彼を見ていると、彼は目を動かして庭を覗いた。「柊征二はいるか?」
「彼がいてもいなくても、あなたは新年の挨拶に来ただけでしょ。浮気しに来たわけじゃない」
「下品な」彼は淡々と言った。短剣のような一言だった。
私は言葉に詰まり、しばらくしてから道を開けた。「せっかだからお茶でも飲んでいけば」
彼は待ってましたとばかりにすぐに足を踏み入れた。
……
本当に厄介な人だ。私は昔、彼の何が好きだったんだろう?思い出そうとすると、ため息が出た。
私は彼の背中に蹴りを入れた。
「見てるぞ。子供っぽい。結婚しても変わらないな」彼は鼻で笑った。
それから庭に立ち、外套を脱いで我が家を見回し、皮肉った。「首席合格者の家がこんなにみすぼらしいとは」雪の降り込む軒下を、冷たい目で見渡した。
私も冷たく言い返した。「あなたと違って名門じゃないもの。彼は私を娶って自分の前途を棒に振ったのよ」
「本来はもっと立派な家に住めたのに、君を選んで愚かなことだ」
「何が言いたいの?うちが貧しいのがそんなに気に入らない?」
「いや、ただ感慨を述べただけだ。苦労も覚えたようで何よりだ」
「愛があれば粗末な食事でもごちそうよ。柊さんが私に優しいから、どんな暮らしでも苦じゃない」言いながら、自分でも少し笑った。
彼は言葉に詰まり、不機嫌そうだった。
私はもう相手にせず、「中に入れば?」と言った。
「入らない」
彼は淡々と包みを差し出した。「新年おめでとう」
「これが返礼?軽いわね。私があげた贈り物は高かったのに……」
包みを開けて、私は呆然とした。
事件記録だった。紙の匂いが、冬より冷たかった。
「久我樹、あなた……」私は感激して涙が溢れた。視界がにじむ。
彼は私を見ず、「見るなら急いで見ろ。終わったらすぐ返せ」と言った。
「ありがとう」
私は記録を抱えて書斎に駆け込んだ。久我樹もついてきた。
私は灯りをつけて記録を読み、たくさんの矛盾点を発見した。これで父を有罪にしたのか!怒りで指先が熱くなった。
「久我樹、見て。証言がちぐはぐで、明らかに誰かに指示されてる!」
久我樹は手を袖に入れ、顔を背けた。「聞こえない」責任から距離を取る、彼なりの優しさだったのかもしれない。
……
私は黙って記録を読み続けたが、分厚くてすぐには終わらなかった。ページをめくる度に、疑念が増えた。
その時、戸が叩かれた。私は慌てて記録を隠した。心臓が音を立てた。
千代が戸を開けると、平安の声がした。「柊様、奥様が終わったら僕にもやらせてくださいよ。風雪の中付き合ったんですから」
柊征二は鼻で笑った。「夫人に聞け、全部彼女のものだ」言葉の端が柔らかかった。
「そうですね、柊様も奥様のものです!」










