Chapter 10: 第10話:花火の下の祈りと秘密
この日を境に、私たちは本当の夫婦のように、穏やかな日々を過ごした。昼は彼が省庁に出仕し、私は自分のことをし、夜は二人で寄り添って囲碁を打ったり本を読んだりした。静かな幸福が、床のきしみとともに染み込んだ。
やがてお正月を迎えた。
私は空に舞う花火を見つめ、北の刑務所での新年はどう過ごしているのかと物思いに耽った。この間、父を告発した証人たちがある料亭と深い関わりがあると分かったが、詳細はまだ分からなかった。糸は見えているのに、結び目は見えない。
あと一年。時間は残酷でも、希望は残る。
私は拳を握り、もし冤罪を晴らせなければ、盗賊になってでも父母を救い出すと心に決めた。法が守らないなら、自分の手で奪い返すしかないと。
「小夜子、何を考えている?」柊征二が背後から現れた。
私は驚き、ごまかした。「何でもない」
父の冤罪を晴らすことは彼に話していなかった。危険を伴うから、彼を巻き込みたくなかった。彼の白い手を、穢したくなかったのだ。
だが彼は見抜いたように、「ご両親のことを考えているのか?」と聞いた。
「えっ、どうして分かったの?」
彼は目を動かし、私を見てからそっと隠した。「勘だよ。心配するな。北の刑務所に人をやって様子を見させた。二人とも無事だ」
「よかった。ありがとう」私は微笑んだ。笑顔が自然に出た。
彼はそれ以上何も言わなかった。
妙な空気になり、私は咳払いして遠くの花火を見て感嘆した。「きれいね、見て」
彼は微笑み、「君も花火を上げたいか?」と聞いた。
「上げたいけど、庶民には無理でしょ」
「待ってて。すぐ戻る」
「え?」私は彼の手を掴んだ。「どこへ行くの?今日はどこも店が閉まってるのに」
「待っててくれ。戸締りをしっかり。年末は泥棒が多いから」
彼は私の手を軽く叩き、平安を連れて出て行った。










