第3話:二度目の護送路と嫁入り道具
私は東条正之の友人に返された財物を見て、目を伏せて静かに謝罪し、そっと一歩引いた。
もう前世のように奪い返しには行かなかった。私は彼らのために動く手と足を、もう捨てた。
もはや誰も「東条殿が俗物を妻にした」とは言わず、むしろ東条家の家風を称え、商家の女でさえ節操を身につけたと褒めそやした。口先だけの花は、寒空に咲いて散った。
姑の静江は満足げにうなずいたが、指はぎゅっと握りしめていた。知月と雪乃の視線は、返された包みに何度もちらりと向けられていた。
私は心の中で冷笑した。彼女たちだって金が良いものだと知らないわけじゃない。ただ私が「俗物」として奪いに行くのを待ち、その後で嫌々受け取りつつ、私を軽蔑し、最後には「家門の不幸」と嘆くのだ。
二人の監獄官吏が苛立たしげに催促しているとき、白い顔で髭のない役人が馬に乗って駆けつけ、内務省の高官から賜った梅の印が押された通行手形を手にしていた。
すでに初冬、東条家の一同は薄着のまま、寒風の中で通行手形を持ち、震えながら官庁に向けて拝礼した。形ばかりの礼は、凍てつく空に吸い込まれていった。
遠くから豪華な馬車が駆け寄り、丸々とした小さな老人が転げ落ちるように降りてきて、私を人目のない場所へ連れていき、涙をこぼした。
「涼よ、父さんがあの誇り高い家柄に無理に縁を結ばせて、お前にこんな災難を負わせてしまった。」
そう言いながら大きな包みを私に押し付け、厚手の綿入れも着せてくれた。「いい子だ、中には銀貨や食べ物、衣服、薬が入っている。監獄官吏にはたっぷり金を渡してあるから、道中で苦労はさせない。北海道集治監にもすでに人を遣って店や家を用意してある。無事に着けば、あとは何も心配いらない。」
私は急に白髪が増えた父の姿を見て、包みを抱きしめ、目頭が熱くなった。
私は生まれてすぐ母を亡くし、父が一人で育ててくれた。私を商家の娘から脱却させようと、東条家の冷遇にも耐えて嫁がせてくれたのだ。
だが前世の私は北海道集治監で命を落とし、父に二度と会えず、東条家の言葉に騙されてあの恩知らずどもを養わせてしまった。顔を見ずじまいだったことが悔やまれる。
「父さん、安心して。娘は今度こそ、しっかり生き抜いてみせます。」
やはり、出発してすぐ、彼らは耐えられなくなった。
「涼、その包みは大きいな。しっかり背負っておきなさいよ。」
姑の静江と知月は寄り添い、顔色は青白く、雪乃は正之の後ろに隠れ、二人で通行手形を抱えて鼻水をすすっている。
一家四人の聖人たちは、じっと私の包みを見つめていた。
彼らはいつもこうだ。自分が欲しいものも口にせず、頼みもせず、ひたすら暗示を送り、私から自発的に差し出させる。
前世の私は愚かにも厚手の衣服を両手で差し出し、彼らは渋々受け取るふりをしていた。
私は綿入れの襟をきゅっと締め、彼らの暗示を聞き流して静江ににっこり笑った。「父が東条家が没収されたと聞いて、わざわざ嫁入り道具を届けてくれたんですよ。」
嫁入り道具は女の私有財産――この言葉を強調した。
案の定、体面を何より重んじる姑は顔を青くして黙り込んだ。
私は冷笑した。かつて東条家では正之の書く和歌が一円銀貨一枚、静江は同じ服を二度と着ず、知月は遠くの湧き水を汲ませ一番摘みの茶葉で淹れた茶しか飲まず、雪乃は玉の器を好んだ。
皆、私の嫁入り道具を当然のように使い、体面も風雅も極めていた。
今になってやっと、嫁の持参金を使うのは恥ずべきことだと気づいたのだろう。
正之は何か言いかけたが、官吏の怒鳴り声に遮られた。「前方がこの道中唯一の商店だ。綿入れや食べ物が欲しければ今のうちに買え。逃すともうないぞ。」
知月は震えながら私を見た。「お義姉さん、お金持ってる?」
私は目を大きく見開いて彼らを見た。「家が没収されたのに、お金なんてあるはずないでしょ?あなたたち、何か持ち出したの?」










