第2話:枕元で笑う家族
私はぼんやりと思い出す。前世で父が持たせてくれた包みで、この世俗を知らぬ聖人たちを北海道集治監まで守ったときの、彼らの態度を。
ようやく落ち着いた途端、東条正之は「この道中、節操もなく、下賤な官吏にもへつらい、妻としてふさわしくない」と言った。
姑は机を叩き、「外の男と通じ、東条家の婦にふさわしくない」と言った。
知月と雪乃は、私を見るのも汚らわしいといった目で立っていた。
私はこの薄情者の一家を見て、怒りに全身が震え、目の前が真っ暗になった。喉の奥が焼け、視界が白く瞬いた。
病に伏し、そのまま起き上がれなかった。
最後の記憶は、東条正之が私の実家が北海道集治監で開いた店を頼りに、再び高潔な貴公子のように振る舞っていたこと。
家族は私の枕元で笑いさざめいていた。
「兄さん、あの人もうだめでしょう?死んだらあの店と沢良木家からの定期送金は……」
姑の静江は首を振った。「知月、心配しなくていい。葬式を出さずに病気で寝込んでいることにしておけばいい。死ぬまで東条家の婦でいさせてやれば体面も保てる。」
「母さんがちゃんとした嫁入り道具を用意してあげるから。」
東条正之の声には少しばかりの罪悪感があった。「ただ、こうなると雪乃に我慢をさせてしまうな。」
義姉の雪乃は淡々と、しかし少し恥じらいを含んで言った。「そんな、正之様は重く考えすぎです。私たちは苦楽を共にした仲、名分はいりません。ただ少年のあなたとずっと一緒にいられればそれでいい。」
私は布団に横たわり、鉄のように冷たく湿った布団の中、炭火もない部屋で息が白く凍った。畳の隙間から上がる冷気が、骨まで染みた。
この偽善で汚れきった一家を殺してやりたいほどだったが、ただ恨みが喉に詰まり、息ができなくなった。
憤死したのだ。怒りは血を凍らせ、心臓の鼓動を奪った。










