雨の日に失われた約束と、記憶の彼方で / 第6話:転生システムへの帰還
雨の日に失われた約束と、記憶の彼方で

雨の日に失われた約束と、記憶の彼方で

著者: 松本 玲奈


第6話:転生システムへの帰還

美織は聞き終わると、またしても我慢できなくなった。

「総司、私はもう折れてあげてるのに、どうして素直にならないの?これ以上騒いでもどうにもならないのよ。どうせあなたはもう逃げられないんだから!」

「この世界であなたの身内は私だけでしょ?」

今、私はようやく確信できた。

美織はあの時、言い間違えたわけではなかった。

彼女の心の中では、ずっとそう思っていたのだ。

私が彼女から離れられず、この世界からも離れられないと。

だからこそ、彼女は何の遠慮もなく振る舞えたのだ。

だが彼女は知らなかった……

実は、私はまだもう一度だけチャンスが残っていた。

その夜、私たちはまたしても別々に寝た。

私はベッドに座り、長いこと考え込んだ末、ゆっくりとバスルームに入り、バスタブに身を沈めた。

冷たい水が体を覆い、私は目を閉じて、ゆっくりと沈んでいった。

ほとんど瞬時に、水が肺に逆流した。

私は制御できずに激しく咳き込み、胸の奥でむせ返るような熱が暴れた。

頭も割れそうに痛む。

……息が、苦しい。

それでも、私は動かなかった。

ついに、窒息寸前の瞬間、なじみのある電子音が脳内に響いた。

【宿主、お久しぶりです】

私は水中でもがき、意識が朦朧とする中で咳き込んだ。

転生管理システムの声は淡々としていた。【自殺ですか?本当に考えは決まりましたか?】

唐突な問いだった。

だが私だけがその意味を知っている。

転生管理システムはかつて、宿主に選ばれるのは、生前善行を積んだが不運にも早世した者たちだと教えてくれた。

そんな人には特別な配慮をするという。

だから、かつて私は美織のためにこの世界に残ることを選んだが、それでも転生管理システムは私に最後の逃げ道を残してくれた。

私は死によって転生管理システムと結ばれた。

だから、もう一度死にかければ、転生管理システムは戻ってくる。

だが、それも今回が最後だ。

念のため、転生管理システムはもう一度確認した。

【以前ルール違反をしたため、再びこの世界を離れるには罰を受けなければなりません。本当に覚悟はできましたか?】

私は黙ってうなずいた。

このまま偽りの女と無駄に余生を過ごすより、他の世界の景色を見てみたい。

罰の内容も、転生管理システムから既に聞かされていた。

それは、私のすべての記憶を消し、再び短期転生任務の世界に送り込むこと。

しかも、通常の倍の任務をこなさなければ「引退」できない。

――実はずっと前、初めてその話を聞いた時、なぜ記憶を奪うのか理解できなかった。

転生管理システムは説明した。【例えば、ベンチの作り方を知っていれば、次に作る時は簡単にできるでしょう?もし以前ベンチ作りで指を怪我した経験があれば、また作る時にトラウマになるかもしれません】

【記憶を消すのは、経験を奪い、しっかりと罰するためでもあるし、ある意味で保護でもあるのです】

その時は軽く聞き流していた。

まさか自分がそれを体験することになるとは思わなかった。

転生管理システムは私の落ち込みに気づいたのか、さらに言葉を添えた。【人道的配慮から、元の世界での記憶だけは残します】

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