第6話:兵糧不足と乱入した元入り婿
私は穀倉のそばの運搬車を見て尋ねた。
「軍は近日中に出発するの?」
視線は荷車に固定される。
私はかつて九条将軍の兵糧を担当したことがあり、どれだけの穀物がどれだけ持つか知っている。手計算が頭の奥で回る。
ざっと見ただけで、せいぜい三~五日分しかなかった。少なすぎる。
征十郎は首を振った。
「私は後方で指揮を執る。少なくとも十日から半月はここにいる。先に将士が国境へ向かう。」
声は落ち着いている。
私の郡は国境に近い。空気に緊張が混ざる。
ここは流寇も多く、北には羅刹軍が虎視眈々と狙っている。最近、羅刹軍が南下して民を襲っていると聞いた。きっとそのために来たのだろう。胸に冷たい重さが宿る。
私は眉をひそめた。
「この辺りは流寇が多いし、軍の兵糧が足りない。護送には気をつけて。」
経験が口を動かす。
彼も眉をひそめた。
「兵糧が足りない?」
視線が鋭くなる。
征十郎は人を呼んで調べさせ、やはり兵糧が三日分しかないと分かった。報告の声が短く走る。
間もなく、兵糧担当の相馬将校が罪を申し出てきた。
「総司令、相馬烈は死罪に値します!護送中に流寇に奪われました。必ず奪い返してから斬られてみせます!」
彼の声は真っ直ぐで、痛いほどまっすぐだ。
征十郎は顔を曇らせ、威厳ある総司令の顔になった。目が冷たい。
「軍律で、兵糧を失った者は斬首だ。」
声は低く、動じない。
無数の将校が跪き、相馬将校のために嘆願した。
「総司令、相馬将校はあなたが育てた将です。どうか一度だけお許しを!」
「相馬将校は功績も大きい。今回だけはお許しください。」
声が重なる。
征十郎の目は動じず、ただ「軍律は絶対だ。軍律に従い詮議を経て斬罪とする」と言った。言葉は石のように重い。
相馬将校が詮議場に引き据えられ、執行役が待機する。空気が固まる。
その時、外で騒ぎが起きた。ざわめきが波のように広がる。
「征十郎、犬野郎!お前の兵糧の目録は俺の手にある。当主を渡せ!兵糧目録と当主を交換だ!」
声が荒い草の匂いを運ぶ。
この声に聞き覚えがあり、私は胸騒ぎがした。背筋が冷たくなる。
かつての入り婿の一人に似ている。嫌な予感。
征十郎の無表情だった目が、今や怒りに満ちて私を睨んだ。
「当主?お前は何人に『当主』と呼ばせているんだ?」
声が鋭い。
私は鼻を掻き、心の中で――これは大きな誤解だと思った。ため息が出そうだ。
私は弱々しく言った。
「相馬将校の処刑をやめて、私が外で話してくるわ。誤解よ、きっと誤解。」
声が少し急ぐ。
相馬将校は台に横たわり、執行役が待機していた。刃の冷たさが空気に混ざる。
征十郎は鼻で笑い、私と共に外に出た。
「挑発までされるとは、どんな奴か見てやろう。」
眉が吊り上がる。
外にはかつての入り婿――荒木田寅次郎がいた。野生の匂いをまとっている。
征十郎の背が高く端正なのに対し、寅次郎は野性的で、日焼けした肌に顔に傷、口には草をくわえ、元山賊の雰囲気が漂う。対比が鮮やかだ。
寅次郎は私を見ると目を輝かせ、馬上から手を振った。
「当主、助けに来たぞ!小梅が、お前がこの犬野郎に捕まったって言うから、きっと殺されると思って兵糧目録を奪ってきた。兵糧目録とお前を交換だ!」
声がでかい。
征十郎は私の手を強く握り、低く言った。
「当主、後の男の趣味は良くないな。こんな粗野な男まで選ぶとは。」
針のある皮肉だ。
私が何か言う前に、寅次郎がまた叫ぶ。
「犬野郎、当主を放せ!男なら正々堂々と勝負しろ!当主をいじめるなんて卑怯だぞ!」
呼吸が荒い。
征十郎はこの挑発に刀を手にして前へ出ようとした。目が炎のよう。
何人もの将校が腕や足を押さえて彼を抱え、「総司令、いけません!今や万金の身、どうして自ら戦うのですか!」と必死で止めた。必死の声が重なる。
征十郎は天性の怪力で、汗だくになりながらも将校たちを引きずり、寅次郎の前まで行った。地面がきしむ。
「下りろ、今日はお前を叩きのめしてやる!」
低い唸り声が震える。
寅次郎は呆然とし、すぐに興奮した。
「犬野郎が力持ちだと聞いていたが、これほどとは!」
目が輝いている。
私も慌てて駆け寄り、
「寅次郎、やめて!兵糧目録を返して、私は無事よ!征十郎、彼はいつも騒がしいだけなの、気にしないで。」
必死に間に入る。
征十郎はさらに怒り、
「お前は誰の味方だ?」
と怒鳴った。声が鋭く突き刺さる。
寅次郎は煽る。
「もちろん俺の味方さ。聞いたぞ、お前は当主に追い出されたんだろ?俺は丁寧に送り出されたんだ。どうだ、俺の方が上だろ?」
笑いが喉の奥で音を立てる。
征十郎は将校たちを振り払い、「今日は誰にも止めさせない、斬ってやる!」目が真っ赤だ。
「総司令、どうかご再考を!」
「総司令、気絶しそうです、振り回さないで!」
止める声が雪崩のように続く。
……
私は何度も説得し、ようやく二人は喧嘩せずに済んだ。汗が冷える。
相馬将校も詮議台から下ろされた。肩の力が抜ける。
征十郎は相馬将校に言った。
「お前は軍律違反で本来なら斬首だが、今回は私と当主のせいだ。兵糧も戻った。お前は二十回の棒打ちを受けろ、私も受ける。この件はこれで終わりだ。異議は?」
言葉に重みを乗せる。
「ありません。」
相馬の声が絞り出される。
この一件で相馬将校は少し元気をなくした。彼は征十郎が本気で斬るつもりだったと悟っていた。目が赤い。
彼は涙を拭い、赤い目で征十郎に言った。
「総司令は二十回の棒打ちを受けなくていい。兵糧を護送できなかったのは私の責任、四十回の棒打ちを受けます。」
声が震えていないのが逆に痛い。
征十郎は「お前もよく言うな、四十回の棒叩きじゃ死ぬぞ!」と吐き捨てるように言う。眉が吊り上がる。
「覚えておいてください!まず二十、後でまた二十です!」
相馬は頑なだ。
……
この四十回の棒打ちは、結局帝都に戻ってから受けることになった。先の約束は重い。
征十郎、寅次郎、私の三人でお茶を飲んだ。湯気が柔らかい。
寅次郎は私にお茶を淹れて手渡し、親しげに「お嬢」と呼んだ。声が甘い。
征十郎は自分の茶碗を音を立てて置き、不機嫌そうに「お嬢?」と尋ねた。目が鋭い。
私は慌てて手を振った。
「変な呼び方しないで。」
視線が泳ぐ。
寅次郎は挑発的な目で、「犬野郎、知らなかったのか?お前のお嬢、俺の後ろ盾だぞ」と言った。笑いが混じる。
征十郎は刀に手をかけた。空気が冷える。
寅次郎は私の後ろに隠れ、「お嬢、止めてくれよ、彼は怖いんだ!」声が小動物みたいだ。
私は彼の手を握って止めた。掌が熱い。
征十郎は眉を上げた。
「止めるのか?」
目が試すように光る。
寅次郎は甘い声で
「止めるに決まってるだろ、お嬢は俺に一番優しいんだから!」
と笑う。言葉が軽い。
征十郎は刀を抜こうとし、私は目を閉じて彼の細い腰に抱きついた。彼は全身を震わせ、寅次郎は横で
「イチャイチャしやがって、気持ち悪い!」
と冷笑した。顔がゆがむ。
……
寅次郎はお茶を飲みながら、私は征十郎に説明した。言葉はゆっくりと。
征十郎が去った後、私はまた何人か入り婿を迎えた。名前だけの婚礼だ。
だが、それは親族の手前、形だけのことで、誰とも関係はなかった。心は空白のまま。
征十郎だけが、私が本気で好きになった唯一の人だった。この言葉は嘘ではない。
寅次郎は「お嬢は一時的に俺たちに家を与えてくれただけさ」と言った。肩をすくめる。
征十郎はまた刀を抜こうとし、私は再び彼の腰に抱きついた。彼の耳がまた赤くなる。
彼は固まって、また耳が赤くなった。恥ずかしさが可愛い。
寅次郎は「もうやめた、気持ち悪い!」と呟いた。舌打ちが聞こえる。
寅次郎は部下に兵糧目録を運ばせた。荷車の音が近づく。
私は偶然、見覚えのある顔を見つけた。胸がざわつく。
頭にできもののある男で、かつて私の町で有名なごろつきだった。征十郎に何度も殴られ、軍に入った男だ。目を合わせない。
私は声をかけようとしたが、彼は私を見るなり逃げた。背中が小さい。
私はますます気になって追いかけ、「何を怖がってるの?」と尋ねた。息が少し上がる。
ごろつきは頭を抱えて
「奥様、勘弁してください。もう旦那様に殴られたくない。あなたの悪口を一度言っただけで、会うたびに殴られ、ついには軍隊に入り、山賊にもなった。今も帰るのが怖い、また殴られるから」
と言った。声が泣きそうだ。
私は驚いた。征十郎は私のために、こんなにも守ってくれていたのだ。心臓が熱くなる。
入り婿だった頃はいつも遠慮していたが、今や総司令となり、威厳に満ちている。私はこの数年で変わったのだと思っていたが、もともと芯の強さを持っていたのだ。表に出ただけ。
まさに、底に潜んでいた力が顔を出した――そんな古い言い回しが、今の彼にぴたりと重なる。










