第2話:立って給仕せよ――嫁いびりの作法
もともと夫は「最初の年は家族だけで簡単な食事をしよう」と考えていた。ところが姑が急に親戚一同を呼び、駅前の会席料理店で大宴会を開くことにした。「いいお嫁さんを迎えたことを皆に知らせたい」と言うのだ。掛け軸のある広間の個室、北関東では珍しい上等な器——見栄と祝意が入り混じっていた。
新しい嫁として、姑の顔を立てるために快く承諾した。目上に恥をかかせない、私の基本動作だ。たとえ胸の奥に小さな棘が刺さったとしても。
途中で姑が持参するはずだった酒を忘れたのを思い出し、夫と一緒に家へ取りに戻った。会席料理店に着いた時には、親戚たちは既に着席し、料理も並んでいた。鯛の姿造りに蒸し物、年越しそばまで用意され、湯気が立っている。でも席は一つだけ空いていた。
夫が私に座るよう促し、自分は椅子を追加してもらいに行った。彼の笑顔はいつもの事なかれ主義のそれで、私を安心させるための薄い膜のようだった。
私が座ろうとしたその時、姑が満面の笑みを浮かべて姑の姉の田所芳江と話していたが、突然表情を曇らせ、私のそばに駆け寄り、腕を掴んだ。
「玲華、うちには何十年も続く古いしきたりがあるの。新しいお嫁さんは初めて帰省する年は、席に着かずに給仕するのよ」「そうすれば来年は家がもっと繁盛するの」。
さっきまで満面だったのに、急に手綱を引かれたみたいな感覚だった。
姑は本当に誠実そうな顔で、まるで来年の繁栄がもう約束されているかのようだった。信仰に近い熱で語るその口ぶりに、周囲もうなずきかける。
思わぬ重責を背負わされた私は一瞬呆然とした。喉が少し乾く。唇を湿らせる時間だけが過ぎた。
親戚たちも姑の言葉で一斉に沈黙し、騒がしかった個室は水を打ったように静まり返った。空気の密度だけが増し、私の心拍だけが早くなる。
全員が私の反応を待っていた。誰もがそれぞれの期待を、皿の上の湯気と同じくらい濃く湛えている。
「玲華、うちには本当にこのしきたりがあるの。新しく嫁いだ人は皆守ってきたのよ」と、私が返事をしないでいると、田所芳江が最初に口を開いた。声の端に、私を値踏みする癖が滲んでいた。
それをきっかけに、他の人たちも口々に言い出した。
「玲華さん、気にしないでね。いじめてるわけじゃなくて、あなたたちのためなのよ」「そうそう、隣の家の息子のお嫁さんがこのしきたりを守らなかったら、家が何年も不運続きだったんだから」。
北関東の井戸端会議は、こうしてすぐに合唱になる。
私は呆然としたまま、少し困った顔をしていた。でもそれは不満や悲しみからではなかった。肌の上に乗った違和感を、どう言葉に置くべきか考えている顔だった。
私は、言うべきかどうか考えていただけだった。何しろ母が「本気になりすぎるな」と何度も言っていたから。ここで刃を抜くべきか、鞘の中で音だけ鳴らすべきか。
しかし皆が口々に話し出したので、これ以上黙っているのもまずいと思い、姑に試しに聞いてみた。
「お母さん、本当にこのしきたりを守らなきゃ、来年は家が繁盛しないんですか?」
どこまで本気なのか、確かめたかった。










