証拠としきたりの間で、静かな大晦日に溶けていく / 第13話:誤解を解くという名の公開処刑
証拠としきたりの間で、静かな大晦日に溶けていく

証拠としきたりの間で、静かな大晦日に溶けていく

著者: 広瀬 みく


第13話:誤解を解くという名の公開処刑

「皆さん、誤解です。お母さんは本当に所在確認のお願いが出されただけで、徘徊老人ではありません。私が細かい性格なので、証拠も添付します。お母さんを誤解しないでください」

文章の端に、意図の針を立てる。

グループには次々とメッセージが届いた。既読の数字が増えていくのを、夫は興味津々でスマホを開き、姑に画面を見せた。義実家は分譲マンションで共用部の防犯カメラがあり、管理会社立ち会いのもと静止画(他人の顔はぼかし済み)を確認し、その場で家族のLINEグループに説明用として共有した。プライバシーに配慮しつつ、必要箇所だけ見せる。

スーパーの配達員が姑に食材を届け、姑はそれを足元に置いて周囲を見回している。義父と夫が遠くから現れると、姑はわざと苦しそうに荷物を持ち上げていた。演技の瞬間は、肩の角度でわかる。ご覧の通り、誰も見ていないところでは頭もしっかりしていて、重い荷物も普通に持てる。徘徊なんてするはずがない。ただ、意地悪に隠れていただけ——そのことを、私は映像で説明した。

姑はそれを見て立ち上ったが、何も言えなかった。唇がかすかに震えて、言葉が落ちない。

私はわざと悲しそうに言った。

「お母さん、私もあなたを心配してたんです。捜索願を出すほどではないと言われたので、まず管理会社に映像の確認をお願いしただけです」「動画は証明のために見せただけで、あなたを傷つけるつもりはありません。私、何か悪いことしましたか?」

声は柔らかく、刃の向きだけがはっきりしている。

姑は謝罪のしるしに二万円くれて、「外で食事をしてきなさい」と言った。包んだ封筒の薄さが、彼女の焦りを伝える。

でも大晦日の親族食事会はどこも予約が必要で、結局持ち帰りでしか手に入らなかった。紙袋の匂いと温度が、家に季節を連れて戻る。

紅白歌合戦を見ながら年越しの食事をし、家族は何事もなかったかのように和やかだった。テレビの光が顔を柔らかく照らし、声だけが均される。

年越しの歌が流れ、今年もようやく終わった。時計の針が零時を指した瞬間、胸の底で何かが静かに解けた。

この家では大人にもお年玉を渡す習わしがあり、姑と義父はそれぞれお年玉をくれた。中には一万円ずつ入っていた。金額はどうであれ、気持ちが大事なのでありがたく受け取った。封筒の紙の手触りまで、忘れないように。

夫と寝室に戻ろうとした時、姑が私の手を掴んだ。

「お母さん、今日のことは本当に反省してるの。年を取って大雑把だから、つい考えずに話してしまう。あなたは気にしないでね」。

言葉は優しく、目的は別にある——そんな気配がした。

私が答えようとすると、姑は続けた。

「一年に数回しか会えないから、今夜は一緒に寝て、ゆっくり話しましょう」。

誘い文句の裏に、何かが隠れているのは常だ。

「いいですよ」と快諾した。ここで断れば、次の言葉がきっと別の刃を持ってくる。

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