第2話:本当の家を求めて
もしかして、前回の親子鑑定が間違ってて、きららの両親が本当の親かもしれないって、そんな希望をどこかで捨てきれなかった。
私はきららがみんなに愛されているのを、何度も見たことがある。彼女は悩みもなさそうで、努力しなくても自然と愛されていた。
もし私が鳳桐家の実の娘なら、同じように愛してもらえるのかな。もう、まるでゴミを見るみたいに嫌われることも、まともなご飯も食べさせてもらえないことも、なくなるのかな。
母に連れられて鳳桐家を訪れたことは何度もある。たいてい年末年始、母が自家製の漬物や調味料を持って挨拶に行くのだ。「きららには私の味を覚えていてほしい」って、母はよく言っていた。
でも、鳳桐家にはそんなもの必要なかった。
私の家は足立区・加寧町団地の古びた棟。鳳桐家は田園調布の大きな邸宅。格子の門と手入れされた庭が、まるで別世界の入り口みたいだった。
きららの母の名前は鳳桐薫子。大学時代、母と同じ寮で親友だったらしい。
薫子さんは美人で、卒業後すぐに老舗企業の御曹司と結婚して、一気にセレブの世界に入った。
母はごく普通のサラリーマンの父と結婚したけど、父がギャンブル好きだと知ったのは結婚してから。家も車も売られて借金だらけになり、父は耐えきれずに自殺した。
母が妊娠に気づいたのはその時だった。ちょうど薫子さんも妊娠していた。
二人の出産予定日はほぼ同じで、薫子さんは母を気の毒に思い、隣の産室を手配してくれた。
だから、子供のすり替えは十分あり得た。
私は鳳桐家のインターホンを押した。家政婦さんは私のことを覚えていたみたいだ。なにしろ、鳳桐家に来る人の中で、私ほどみすぼらしい子はいなかったから。
家政婦さんは私の後ろをちらっと見て、警戒しながら聞いてきた。
「一人で来たの? 奥様にご用?」
私は緊張しながらうなずいた。
「大事な話なんです。」
「何の話? 奥様は忙しいから、私が伝えればいいわ。」
「それは……」
私は言葉に詰まってしまった。
その時、薫子さんがきららの手を引いて帰ってきた。
「未咲ちゃん、どうしたの?」
薫子さんは本当に優しい人だ。私のことを「未咲」と呼んで、あの嫌な字を避けてくれる。
私は勇気を振り絞って近づいた。
「薫子おばさん、二人きりでお話ししたいです。」
そう言うと、薫子さんの穏やかな表情が少しだけ固くなった。何かを察したようで、きららに言った。
「きらら、先に一人で二階で本を読んでて。ママはちょっと用があるの。」
「うん。」
きららは明るく返事して、羽が生えたように軽やかに階段を上がっていった。
薫子さんはやっと私の方を見てくれた。
「茶室で話そう。」










