第6話:奪われた身体と繰り返しの朝
案の定、翌朝、私は明里が満面の笑みで私の宮にやってきて、ひたすらロードを繰り返すのを目の当たりにした。障子の影が同じリズムで揺れる。
「九条さん、今日は真人は後宮に来る?」
「兄上からは何も知らせがありません。嘉女御様、何かご用にございますか?」
私は茶碗を手に取る。
「九条さん、今日は真人は後宮に来る?」
「兄上からは何も知らせがありません。嘉女御様、何かご用にございますか?」
私は茶碗を手に取る。
「九条さん、今日は真人は後宮に来る?」
「兄上からは――」
私は手を伸ばしかけ、
「九条さん、今日は真人は後宮に来る?」
「兄上からは――」
私は手を伸ばしかけ、
「九条さん、今日は真人は後宮に来る?」
「兄上――」
私は手を伸ばす暇もなく、
「九条さん、今日は真人は後宮に来る?」
突然、激しい頭痛に襲われ、何度も繰り返した茶碗を取る動作が続けられなくなり、仕方なく別の言葉を口にした。「嘉女御様が兄上をお探しですか?もしかして、九条家伝来の槍術をご覧になりたいのですか?」
明里の目が輝いた。何かイベントが発生したと思ったのだろう。「そうです!私、子供の頃から九条将軍をとても尊敬していたんです!」幼少設定の台詞を嬉々としてなぞる。
嘘だ。声の滑らかさが、嘘の質を高めるだけだ。
私は冷たく思った。どこにそんな「幼少設定」があるのだ。この世の十五歳の少女たちは、みな彼女の体になる可能性がある。部屋の壁は、彼女の視界の外側にしかない。
いや、私の容姿すら、彼女が使うことができるのだ。肌の色も髪の長さも、スキンのように差し替えられる。
たぶん今、明里が見ている私への好感度はゼロなのだろう。だから私は冷たく言った。「嘉女御様のお言葉、妾の父には過ぎたる光栄でございます。将軍たる者、国を守るのは本分です。」
明里はにこやかに言った。「国を守る者は多いけど、九条将軍のような人は万に一つ。まして……」言葉の切り口に、イベントの匂いがした。
「まして何ですか?」
「まして、九条さんの容姿は絶世で、白鷹のように気高いと聞きました――」
そう言いかけて、彼女は言葉に詰まり、眉をひそめた。「このキャラ設定、なんで……」ウィンドウの文章が一瞬ちらつく。
私は息を呑み、直感で彼女がこれから言おうとすることが重要だと感じた。だが次の瞬間、また先ほどの場面に戻り、明里は再びにこやかに「まして、九条さんの容姿は絶世で、白鷹のように気高いと聞きました。九条将軍は白刃の将と呼ばれていて、憧れます」と言った。修正済みのセリフが滑らかに流れる。










