第5話:全キャラ図鑑制覇宣言
彼はとても元気そうだったが、私は疲れ果てて「兄上が来たのですね」とだけ言った。声は柔らかいが、芯がない。
真人は「後宮は住みにくいのか?」と尋ねた。問いは私の肩に静かに落ちる。
私は目を伏せた。「兄上、軽々しく口を滑らせてはいけません。」ここでは言葉は刃だ。
気の利く侍女が他の者を下がらせ、兄妹二人だけになった。空気がわずかに緩む。
真人は「父と私がこの数年どんな危険を乗り越えたか、聞かないのか?」と問う。声に熱が宿る。
私は以前にその話を聞いていたので、今回は口元を引きつらせて言った。「辺境は厳しい寒さでしょう。無事に帰ってきてくれればそれで十分です。どんな危険も、兄上が口で言うだけでは私には分かりません。なら、聞かない方がいい。」
私がそう言うと、真人はしばらく黙った後、「やはり大奥は住みにくいのだな」と言った。彼の目に、私の沈黙が映る。
もし家にいたなら、真人がこんな風なら私はとっくに竹刀で彼を叩いていただろう。笑いながら、痛みを軽くすると分かっているから。
私は彼とやり合う気力もなく、「私は運が薄いだけです」と言った。薄い紙のような言い訳だ。
この大きな男は、私が彼のために災難を引き受けたことなど知らない。ロードの影が、私の上に重なっていることも。
私は考えた末に念を押した。「これからは、もう後宮に来てはいけません。」声の端が細く震えた。
真人は眉を上げた。「でもこれは近衛大将の座と引き換えに得た恩典だぞ。」
「……」言葉が喉の奥で絡み合い、ほどけない。
私はしばらくしてから言った。「お願いだから。」最後の糸を、指の間で結ぶように。
その言葉を聞いた瞬間、真人の手から温かな茶が一滴こぼれ、琥珀色のしみが彼の深紅の直衣に落ちた。時間の同じ場所に、同じ滴が落ちた記憶が重なる。
まるでホトトギスが血を吐くように、痛ましくも静かな痕跡だった。色の濃さだけが、心へ沈む。
私は彼とまっすぐ見つめ合った。手に銀の槍も剣もなく、ただ香り立つ急須を宝石の爪をはめた手で包み込んでいた。手の中の温度が、唯一確かな現実だった。
彼は何度も口を開きかけ、結局こう言った。「三ヶ月。」
「三ヶ月ごとに、必ず大奥に来て君に会う。」言葉を刻むように、間を置く。
真人は、私が話したくないことはどんな手を使っても言わせられないと知っている。私が何か言いかけると、彼は先に口を開いた。「近衛大将という役目の価値を、少しは高めさせてくれないか?」
この数年で私は少しずつ規則を掴み始めていた。誰がどの札を動かし、どんな音で場面が切り替わるか。
明里にとって、この世界は彼女が遊ぶためのゲーム場であり、都に新しく現れる魅力的な男性は皆、彼女が愛情を奪う標的だった。新規キャラの通知が出るたび、画面の端が明るくなる。
今日、明里は私にバグが起きたと思い込み、興奮して真人を後回しにしたが、彼を本当に諦めることはないだろう。彼女の指は、いつか必ず伸びてくる。
「私はコンプリート主義だよ。目標は全キャラ図鑑制覇!」これは明里の言葉だ。無邪気で、そして残酷な宣言。










