終わりのない後宮で、ただ一人魂を待つ / 第3話:攻略困難キャラの生存戦略
終わりのない後宮で、ただ一人魂を待つ

終わりのない後宮で、ただ一人魂を待つ

著者: 林 悠斗


第3話:攻略困難キャラの生存戦略

「九条さん。」明里は嬉しそうにやってきて、またもや高価な体力を底上げする滋養薬を山ほどくれた。「全部体にいいものだから、ちゃんと使ってね!」色鮮やかなアイコンが並ぶように、机の上へ次々と置かれていく。

そう言って、一瞬ぼんやりした。おそらく私の体の数値をチェックしていたのだろう。視線の奥で、数値の桁が小さく揺れた。

私は微笑んだ。「ありがとうございます、嘉女御様。」口元だけを柔らかく、心は結んだまま。

明里は唇を尖らせて不満そうに言う。「九条さんはいつもよそよそしいですね。もう二、三年も一緒にいるのに、まだそんなに距離を感じます。」

だが私は知っている。彼女は本当に不機嫌なわけではない。新しい反応を待つ顔だ。

むしろ、彼女は興味津々でこの状況を楽しんでいるのだ。攻略画面の「未達成」の表示が、彼女を喜ばせる。

この三年間、明里は何をしてきたのか?彼女の指の届く範囲を、どこまで延ばしたのか。

皇后の座まであと一歩、最も優秀な皇子たちを育て、帝からは深い愛情を受け、前朝の大臣や宮中の陰陽師、誰もが彼女に心を奪われている。まるで盤上の白石がすべて彼女のために並べられているように。

私は彼女の子供の父親がどの大臣かまで知っている!数値が誰に紐づくか、その裏側を見てしまったからだ。

だが、私は下手に動くことはできなかった。糸の束に絡め取られ、ほどけば切れる仕掛けだと分かっているから。

今日、私が彼女の罪を告発すれば、彼女はすぐにロードして、何食わぬ顔で私を何度でも消すだろう。声ひとつで私の一日をなかったことにできるのだから。

私にできることは、明里にとって最も攻略しにくいキャラクターになることだけ。常に手の届かない場所に立ち続けること。

彼女の芝居に付き合い、永遠に彼女の探究心を保たせ、生き延びるしかない。興味の灯が消えない限り、私の輪郭は続く。

ある時、私は女御の一人に暗殺されかけた。死ぬ寸前、明里は焦ってロードし、その女御を私より先に藤壺送りにした。場面を先回りして差し替える、冷たい優しさだった。

彼女が私に興味を失うまでは、明里こそが私の最大の庇護者だった。指先ひとつで嵐を止めることができる者が、上にいる。

私は明里に簡単に攻略されてはいけない。絶対に。容易なルートに落ちるわけにはいかない。

私は永遠に神秘的で、永遠に距離を保ち、時に親しげに振る舞う。近づきすぎず、遠ざかりすぎず、細い線の上を歩く。

ちょうど今のように、私は静かに言った。「とんでもないことでございます――明里、あなたがこれほどまでにしてくれるのに、姉としてどうお返しすればいいのか分かりません。」言葉の端に、わずかな温度を灯す。

これが初めて彼女を「明里」と呼んだ時だった。明里は目を見開いた。「えっ?」目の奥に虹色の光が走る。

次の瞬間、またこの言葉を言う前に戻っていた。明里は嬉しそうに、私がもう一度言うのを待っている。だから私は素直に繰り返した。「とんでもないことでございます――明里、あなたがこれほどまでにしてくれるのに、姉としてどうお返しすればいいのか分かりません。」…

明里は何度かロードして、この言葉に満足したらようやく先に進んだ。「九条さんが私にお返しなんて言うんですか?」緑の指名札、ゲームのUIに表示される札が襟元で揺れる。

彼女は言った。「将来お姉さまも皇子を産んだら、私がその子の名付け親にならなきゃ!」快い未来図を軽く弾いてみせる。

もしかしたら、帝や大臣たちが明里にとっては、少し贈り物をすればすぐに全力の愛を得られるから、だんだん興味を失っていったのかもしれない。簡単すぎるものに、彼女は飽きる。

唯一の例外である私は、明里にとってかけがえのない存在となった。数値が思うように動かない、唯一の点。

彼女は私を「隠しイベント満載の宝物・九条さん」と呼ぶ。声の端が、玩具を手にした子供のように弾む。

時には、彼女はただの子供で、悪意などほとんどないのではと思うこともある。悪意があるのは、むしろこの盤面の設計のほうだ。

結局、彼女にとって私は操り人形でしかない。飾り付けて遊ぶ対象で、壊すつもりはないが、壊れても困らない。

誰が人形に化粧や着飾りを施すことを残酷だと思うだろうか。可愛いからと、髪を結い直すことに罪はないのだと思っている。

だが、私は自分自身や自分の子供が彼女に操られることをどうしても許せなかった。ここだけは、指先に渡してはならない。

十月の妊娠期間を経て、彼女の思いのまま、まったく違う顔をした我が子を押し付けられるなんて!形の違う未来図を、いとも簡単に差し込まれるのだ。

私は心を巡らせ、最終的にこう思う。「皇嗣を産むことなど、私は望んでいない。」その言葉だけが、自分の意志の形をしていた。

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