港区と下町の境界で、罵倒と涙を分け合う私たち / 第6話: 炎上とサブ垢と港区VS下町
港区と下町の境界で、罵倒と涙を分け合う私たち

港区と下町の境界で、罵倒と涙を分け合う私たち

著者: 金子 奈々


第6話: 炎上とサブ垢と港区VS下町

【一般人だけど、琴音と珀様が幼馴染なのは誰でも知ってる。彼女は何しに来たの?】【珀様に取り入ろうとしてるだけでしょ?】【なんで今でも無礼を本音だと勘違いする人がいるの?】

珀様はサブ垢で自ら出陣。

【よよよ、本当に怒ってるの?】

このコメントがあまりにも挑発的で、炎上した。話題性は最高潮。珀様も三つのトレンド入りを果たした。#西園寺珀が恋愛リアリティーショーに参戦##港区界隈若手経営者##西園寺珀の素顔# この話題で、ネット民は再び財界ネタで盛り上がった。

【港区から出られないなら、履歴書持って行って。】【大田区の人は生まれた瞬間から町工場の手伝いをする。】

対照的な二つの世界が、コメント欄でぶつかり合っていた。

第二話からは、みんなでイチャイチャし始める。私と珀様は「親しくない」を徹底した。最初のデート場所はカフェ。私と珀様は同じテーブルに座り、一言も話さず、スマホでLINEチャットした。珀様:【イチャイチャできる?】私:【少しはできるけど、どうしたの?】彼:【やってみろ。】

私は頭をひねって考え、彼に送った。

【あなたの飲み物は2,300円だよ。】【……】

珀様はスマホから視線を外し、私を見て、薄い唇を開いた。

「いいね、次は言わないで。」

さすが私の声。こんな冷たい言葉を、こんなに綺麗に言えるなんて。私はうなずいた。

「その声、腹立つくらい綺麗だね。」

「気持ち悪い。」

私はまた傷ついて、心が折れた。北条のテーブルも和やかではなかった。彼女は薄化粧で、恥じらいながらコーヒーを飲む。プログラマーは言いたげで言えない。彼女は髪をかき上げて「言って……」

「口紅が歯についてるよ。」

北条「……」

彼女の強い要望で、「口紅が歯についた」シーンはカットされた。琴音とそのカップルもお互い気に入らず、黙々と飲んでいた。私と珀様はほぼ全編、スマホで会話した。コメント:【こんなにミスマッチなリアリティーは久しぶり。誰も親しくなくて、無秩序の美がある。】【実家で無理やりお見合いさせられてる気分。】【カフェのPR動画みたい。】【琴音はなんでずっと下を向いてるの? そんなに美味しいの?】【せめて演技くらいしてよ。】

視聴者の正直さは、痛いくらい沁みる。

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