第13話: 不器用なプロポーズと送料無料プリンス
私は、珀と妙な曖昧さを感じていた。今はもう私を毒舌せず、妙に優しい。次シーズンのマーケ戦略を話していると、彼の電話が鳴った。
「母からだ、出ないと。」
出るのはいいけど、なぜスピーカーにするの? 彼の母は電話越しに叫んだ。
「三年前から相手がいるって聞いたけど、なぜまだ結婚しないの?」
彼は私を見て、目に夕焼けを映しながら答えた。
「『結ぶ』の昆布ってことで。」
母は「どういう意味? 今夜それを食べるの?」と戸惑った。彼は落ち着いて言った。
「縁結びの冗談だよ。まだ結ぶには時間が必要って意味だ」
「このやろう。」母は自分でも呆れるほど怒っていた。私はアイスクリームを食べていたら、中からキラキラ光る大きなダイヤの指輪が出てきた。彼のサプライズ演出はなかなかのものだ。私は彼を見上げた。私が聞かないと、彼は言わない。私が言えば、彼は驚く。
「これは……」
彼は驚いた顔で言った。
「これは婚約指輪だ! 俺たち本当に運命の相手だ」
私はふと、彼が昔言った言葉を思い出した。
「男のフリができないなら、しゃべるな。」
この人はずっと、不器用なプロポーズの準備をしていたのだ。
私は夕焼けの空の下、彼のプロポーズを受けた。私と珀の結婚ニュースのタイトルは「町工場のプリンセスとIT御曹司の強力タッグ」。かつて「玉の輿」と言われた見出しを思い出し、心が複雑になった。あの頃は「不真面目な女優」と言われていたが、今は若手起業家だ。振り返ると、私はなかなかすごい。下町の風が、ドレスの裾を持ち上げた気がした。
【番外編】
結婚三年目、私と珀には息子が生まれた。彼は東京で学校に通い、“港区プリンス”なんて冗談で呼ばれている。クラスでは、親の仕事にひっかけて“送料無料”とも呼ばれた。礼(れい)は小さい頃から賢かった。会社のスタッフがライブコマース配信で「たくさんの子供たちがうちの製品を好きになってくれてます! アシスタント、在庫を追加して」と言うと、彼は横で
「追加しなくていい! お姉さん、追加しないで! 全然売れてない!」
と叫んだ。
「うちの製品は新開発だけど、この分野ではトップクラスです!」
彼は「そんな話聞いたことない」と返した。珀は彼を叱った。それで、もう二度と自社のライブ配信で変なことを言わないと約束した。口は達者、でも根は素直。
だが「正直すぎるアシスタント」というキャラはライブ配信で大人気に。新規の視聴者はみんな礼を見たがる。子供は嘘をつかないと信じているからだ。でも実際は、みんな騙されている。礼は「子供は嘘をつかない」キャラを確立し、ライブ配信で好き放題言った。
「前はこれ9,980円だったよ! パパとママがいない間にこっそり3,980円に値下げ!」「パパとママが出かけたから、今日は何を売ろうかな。」
この一ヶ月、売上はブラックフライデー並みに急増した。コメント:【これが天性の売り子力か】【買うつもりなかったけど、お姉さんって呼ばれたら財布全部あげちゃう】彼は私と珀の昔のネタも使う。
「お姉さん、何か言ってよ、買う? こっそり値下げしてあげるよ。」
私と珀は売上を見て、感動で涙を流した。彼は頼れる二世だ。これで安心して引退できる。―完―










