第12話: 港区の晩餐会と噂の婚約者
私の工場はますます大きくなった。ある晩餐会で、また琴音に出会った。彼女は純白のドレスを着て、私を見るなり飛び跳ねて言った。
「また何する気?」
数年前の言葉が心に刺さる。珀様の暴言の報いが私に返ってきた。私は気まずそうに言った。
「お父様とコラボ企画の話をしたい」
彼女は驚いて言った。
「変わったね」
「え? どこが?」
「口調が。」
納得の理由。彼女は「私は反対、珀お兄さんに話して」と言った。私は「じゃあ他のパートナーを探す」と言って立ち去った。彼女はしばらく黙った後、裾をつまんで追いかけてきた。
「いいよいいよ! あとでお父さんに話してあげる!」
彼女は単純で、ちょっと騙しやすい。純白のドレスの裾が、灯りに揺れた。
西園寺珀は銀灰色のスーツで談笑していた。シルバーのライトの下、整った顔立ちで格好良かった。相手は私を見ると目を輝かせた。
「この方が西園寺社長の婚約者ですか?」
噂は信じないで。マーケティングアカウントを信じる人たちって本当におかしい。珀は微笑みながら首を振った。
「まだ違います。」
「じゃああの芸能ニュースは……」
相手は戸惑った顔。彼は微笑みながら言った。
「メディアは噂が大好きです」
「違うよ、“旦那、何か言ってよ”ってやつ。」
珀は笑顔が固まり、続けられなくなった。通りかかった私を見ると、また名言を言った。
「何か言ってよ。」
私は「言ったよ。」問い詰める相手を笑わせて、質問を忘れさせた。作戦成功。人が去った後、珀は小声で「低コミュ力」と呟いた。
私は「高コミュ力のやり方は?」と聞いた。彼は言った。
「頷いたら“はい”、首振ったら“いいえ”、なずなを見たら“愛してる”」
私は大声で笑った。
「気持ち悪い、あなたも男のフリが下手なんじゃない?」
彼はちょっと傷ついた顔をした。たまに可愛いところがあるのが、余計にずるい。










