港区と下町の境界で、罵倒と涙を分け合う私たち / 第10話: 玉の輿より町工場、二度目の入れ替わり
港区と下町の境界で、罵倒と涙を分け合う私たち

港区と下町の境界で、罵倒と涙を分け合う私たち

著者: 金子 奈々


第10話: 玉の輿より町工場、二度目の入れ替わり

恋愛リアリティーショー終了後、私はしばらく暇になった。珀様が聞いてきた。

「暇になったのか?」

え? 芸能界にハマったの?

「恋愛リアリティーショーのギャラを待って、片付けて引退するつもり。」

考えるだけで嬉しい。私は珀様とまた酒を開け、前後の脈絡もなく話した。

「みんな、あなたと琴音が幼馴染だって言ってるけど、何かネタある?」

「ありえない。俺たちは出身地も違うし、幼馴染じゃない。」

私は驚いた。

「同じ区じゃなかった?」

「同じ区でも、同じ町内じゃない。」

私は黙り込んだ。彼の区分けは細かい。

「珀様って面白いね、みんなが俺を立ててくれる。」

「芸能人も面白いよ、みんなが俺の毒舌を見てる。」

彼はしばらく黙り、突然思い出したように叫んだ。

「やれるもんならやってみろ!」

また入れ替わった。珀様はまだ酔っていたが、戻った瞬間に仕事に戻った。私は、どこに行ったか分からない父親のことを思い出し、3億5千万の借金は自業自得だと感じた。強く生きるって、こういうことだ。

私は最高潮の人気の中で引退を宣言した。みんなが「玉の輿に乗るのか」と思っていた頃、私は町工場の後始末に戻った。パパラッチは私と珀様を一日中追いかけ、何か面白いネタを探していた。結局、珀様は本社ビルに一日中座っていた。私は工場に入った。何度もパパラッチを工場に招き入れようとしたが、彼は何度も断り、最後は熱心な従業員に引きずられて入ってきた。

私は彼に製品を紹介した。

「全部本革! 防水だよ、この質感触ってみて!」

パパラッチは触って「確かにいいね」と言った。

「これは新作! 工場直販で3,000円!」

後ろの主任が小声で「姐さん、この価格だと原価ギリギリですよ」とささやいた。

「赤字でもいい! 宣伝のために自腹で補填して何が悪い?」

パパラッチは涙ながらに五つも財布を買った。騙した。原価は1,000円だが、人件費と宣伝費を入れると2,500円が損益分岐点だ。

私はその夜、パパラッチのスクープを見た。

【二流女優が玉の輿? 真相は……】

真相は、この二流女優が町工場に入り、従業員を率いて共に豊かになる道を歩んでいることだった。

【本当に工場を継いだの?】【黒い文字がどんどん赤く見えてくる】【どこで彼女の財布が買えるの?】【リンクはこちら!】

私は毎日工場の仕事に追われ、元の人気を利用して大口契約を取った。珀様から音声メッセージが来たが、私は出なかった。彼:【今や君は大忙しだな】少し寂しそうな口調。私:【毒舌したければどうぞ。でも終わったらちゃんとギャラ払ってね】【……】少しだけ胸が疼いた。

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