桜京の城壁から、何度でも君を選ぶ——転生皇女の終わらない夢 / Chapter 8: 第8話:転生者同盟と卑劣な逆襲プラン
桜京の城壁から、何度でも君を選ぶ——転生皇女の終わらない夢

桜京の城壁から、何度でも君を選ぶ——転生皇女の終わらない夢

著者: 伊藤 さくら


Chapter 8: 第8話:転生者同盟と卑劣な逆襲プラン

秋の狩猟後、湊が橘さんに求婚したことが広まった。彼は堂々と将軍家に通い、紗季も病後に彼と親しくなった。噂は甘く、現実は意外に静かだ。

だが私は単純に信じなかった。彼の言葉も、彼の微笑も、容易には信じない。

その夜、私は盛装して湊を灯籠祭りに誘った。彼も転生者であり、何か知っているような気がしたからだ。杏の灯が川面に揺れ、人の影が温かい金色に染まる。

約束の時間を過ぎ、桜京の杏花楼で待ちくたびれていると、湊がようやく現れた。手にはウサギの灯籠と桂花のお菓子を持ち、だらしなく門の柱にもたれて私を見ていた。「皇女殿下、お待たせしましたか?」余裕のある遅刻は、相変わらず腹が立つ。

私は不機嫌に彼を睨んだ。「いつ転生したの?」問いは短く、刃は細い。

彼は首を傾げて私を見た。「転生?天気の話?今日は朝からずっと晴れてるけど、そのこと?」ふざけているのか、探っているのか、判然としない。

「とぼけないで。いろはの順番、みんな転生者だと分かってる。隠さなくていい。」合図はもう済んでいる。

湊はようやくだらしない態度をやめ、席に着いて酒を注いだ。「皇女殿下はいつ転生した?」と、低く問い直す。声が一段落ち着いて、目は少し真面目になる。

「前世で胎内転生した。」私は隠さず話した。今は味方が必要だ。蓮は攻略者で、私の知らない手段が多すぎる。正直に言葉を差し出すしかない。

彼は面白そうに眉を上げた。「偶然だな、君もリセットしたのか?」語尾の軽さで緊張をそっと解く。

私は試しに聞いただけだったが、彼は驚きの答えをくれた。「君も転生+リセット?」目の中に、少し遊びの光が宿る。

彼は首を振った。「正確には三回目のリセットだ。」さらりと言ってのける。

三回!私は一度だけなのに、彼はすでに三度も!数の差が、そのまま経験の差に見えた。

私は興奮を抑えた。「だからか。今世、君と蓮は何の因縁もないのに、やたらと敵対している。三度もリセットしたなら、蓮が敵国と通じて帝国が滅ぶことも知っているんだろう?」言葉は速く、心はさらに速い。

彼は頷いた。「知っているだけじゃない。皇女殿下、君が前の二回、どれも悲惨な死に方をしたのも知っている。」彼の目が一瞬だけ痛みを宿す。からかいの仮面の下に、固い意志が覗いた。

この人は人の心に刃を突き刺すのが得意だ。必要な時に、ためらいなく。

私は吐き気を堪えた。「私は自分も帝国も救いたい。君はどちら側なんだ?」問いは鋭く、答えは重いはずだ。

「さて、どうだろう?」彼はいつもの軽口でかわす。だが、瞳の奥は笑っていない。彼の中にある別の任務を、私はそこに見た。

彼のからかう目を見て、私は味方だと確信した。軽さは彼の作法で、誠実はその根だ。

「なぜ橘さんを娶ろうとした?」核心に踏み込む。

湊は驚いて私を見た。「まさか君は知らないのか?前世であんな目に遭ったのは、橘さんのせいだぞ?」声が少し低くなる。重い話のときの癖だ。

私も驚いた。私が蓮を信じすぎて、何も警戒せず、ああなったのだと思っていた。罪の方向が、別の方角を向いていた。

「やっぱり知らなかったか。俺は二度リセットして分かった。蓮は橘さんが好きだったが、君のせいで彼女が死に、蓮は君を苦しめて殺した。二度目は君が橘さんを殺さなかったが、恋愛脳すぎて何でも蓮の言いなりになり、やはり同じ結末だった。」淡々としているのに、言葉は冷たい。

私は拳を握りしめた。一度で十分なのに、実はそれ以上だったのか。過去は、いつも私を裏から斬る。

「それなら、橘さんを娶るのは蓮への宣戦布告だ。彼は攻略者で、システムというチートがある。簡単には勝てない。」警戒の刃を磨く。

湊は突然私に顔を近づけた。白い顔がすぐ目の前にある。体温が、少し近すぎる。

「転生者は俺たちだけだと思うか?蓮もリセットしてるはずだ。」低い声が、事実の重さを運ぶ。

蓮もリセット?私はうすうす感じていた。嫌な予感は当たりが多い。

湊が近すぎて、口から桂花のお菓子の香りがした。私は思わず顔を背けた。香りは彼の癖のように、いつもさりげなくまとわりつく。

「彼がリセットしても、君が橘さんを娶ることと関係ある?」まだ腑に落ちない。

「蓮の攻略対象は君だ。でも君に他に好きな人ができたら、攻略失敗になると思わないか?」論理は単純で、効果は絶大だ。

「皇女殿下は男を知らないな。特にクズ男は、リセットして前世で自分に夢中だった女が他の男に取られ、自分の支配下から外れ、その男が二人の女を奪ったら、どうすると思う?」皮肉混じりの解説は、妙に説得力がある。

私は無表情で彼を見た。冷静な顔に、少しの怒り。

「君は本当に卑劣だな。」吐き捨てるように言う。

「褒め言葉だ。聖人君子なんてつまらない。悪党のほうがずっと面白い。」彼の笑みは、相変わらず軽い。

「見ていろ。今夜、蓮は必ず離宮に忍び込む。」未来予測を、彼はいつも軽く言う。

湊は軽く笑い、私を杏花楼の窓辺に連れていった。「この万家の灯火を守るのは簡単だ。君がどう選ぶか次第だ。」選択こそが、この世界で唯一の力だと言わんばかりに。

湊は軽く笑い、私を杏花楼の窓辺に連れていった。「この町じゅうの灯りを守るのは簡単だ。君がどう選ぶか次第だ。」選択こそが、この世界で唯一の力だと言わんばかりに。

私は彼の手を振り払わず、そっと聞いた。「前世、私が兵士たちに辱められないよう命を賭して守ってくれたのも、演技だったの?」問いは怖い。答えはもっと怖いかもしれない。

しばらく返事がなく、また聞こえなくなったのかと思った。彼は時々、都合の悪いときだけ聞こえないふりをする。

だが彼は深くため息をつき、ウサギの灯籠を私に渡した。「それは違う。血気のある男なら誰でもそうするさ。」短い言葉の裏に、少しだけ本音が覗く。

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