桜京の城壁から、何度でも君を選ぶ——転生皇女の終わらない夢 / Chapter 7: 第7話:仮面の功績と将軍家への求婚
桜京の城壁から、何度でも君を選ぶ——転生皇女の終わらない夢

桜京の城壁から、何度でも君を選ぶ——転生皇女の終わらない夢

著者: 伊藤 さくら


Chapter 7: 第7話:仮面の功績と将軍家への求婚

刺客は全員牢に送られ、紗季は重傷で将軍家に運ばれた。血の跡が道に残り、風がそれを薄めていく。

蓮は救援の功績で皇帝陛下から身分剥奪を免除されそうになった。彼の名は、かろうじて泥の中から顔を出すところだった。

だが私はすぐに言った。「今回私を救ったのは白河家の湊さん、そして橘さんも刺客の注意を引いてくれた。もし二人がいなければ、私は刺客の刃に倒れていたでしょう。」重ねた言葉の一つ一つが、判断を支える杭になる。

「ただ、この銀の仮面の方はどなたのご子息ですか?なぜ顔を隠しているのです?」仮面は滑稽で、同時に不気味だ。

私は蓮を見た。今世の彼は私の助けがなく、身分を脱することはできない。仮面の裏で、歯を食いしばっているのが見えるようだった。

蓮は低く答えた。「奴は顔に傷があり、卑しい身分です。橘さんに拾われ護衛となりましたが、今回救ったのは湊さんです。奴は賞を受ける資格はありません。」言葉の選び方は慎重で、狡猾でもあった。

皇帝陛下は疑いの目を向けた。皇帝の沈黙は、採点の間の長い時間に似ている。

湊が口を開く。「英雄に身分は関係ない。顔を気にする必要もない。宮中の医師なら治せるでしょう。」一歩先の希望を、さらりと差し出す。

私は湊を見て、正しい選択をしたと思った。彼の言葉は、土台を作るのが上手い。

蓮はしばらく沈黙し、仮面を外した。

その瞬間、私は息を呑んだ。空気が一秒ほど止まった気がした。

顔の上半分は傷跡だらけで、誰にも正体は分からないほどだった。皮膚のひび割れは、彼の過去の物語だった。

皇帝陛下は疑いを捨て、金銀財宝を与え、湊を見た。視線は穏やかに、しかし重かった。

その目はまるで娘婿を見るようだった。親の目の温度が、場の空気を変える。

「白河家は良い息子を持った。今回の功績と秋の狩猟の優勝、まだ未婚だが、うちの咲夜はどうだ?」その言葉は、運命の枠をまた少し動かした。

私は湊を見た。さっきの話は蓮を試すためだったが、まさか本気で私を娶る気はないだろう。胸の奥に、小さな不安が芽生える。

湊は私の視線を受けて礼をした。「陛下のお言葉はありがたいですが、私には心に決めた人がいます。」言葉は真っ直ぐに落ちる。

「誰だ?」皇帝陛下の声は低く、短い。

湊は堂々と答えた。「将軍家の橘さんを長く慕っております。どうかお許しを。」空気が一瞬固まり、そしてざわめきが広がった。

その言葉に全員が驚いた。蓮も湊を見つめ、私もなぜか胸が空っぽになった。中身が抜けた器のように、音だけが響く。

安心したような、でもすぐに別の感情で塞がれる。安堵は裏返せば、苛立ちにもなる。

湊は紗季が好きなのか?前世、湊は何度も蓮に対抗した。それは紗季のためだったのか?過去の線が、新しい図形に見えてくる。

だが前世、彼が紗季を娶りたいと言ったことはなく、蓮も彼女と関わりはなかった。失われた情報が、今になって姿を見せている。

しかもさっき林で刺客に襲われたとき、湊は紗季が傷ついても平然としていた。感情の起伏が薄いのは、彼の癖だ。

なぜ私を拒み、紗季を求めるのか?自分の心が、自分でも分からない。

頭が痛い。今世の出来事は前世とまるで違う。転生した私ですら、結末がどうなるか分からない。知らないということは、恐ろしくも、少しだけ楽しい。

皇帝陛下は湊の答えに不満そうだったが、許可せず、橘さんの怪我が治るまで待つよう言った。判断を引き伸ばすのは、最も穏当な選択だった。

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