Chapter 8: 第8話:マンション同棲とごまかした彼氏
寮にはもう住めないので、神谷が「前から学外に借りているマンションがある。騒ぎが落ち着くまでそっちに来い」と言ってくれ、私は厚かましくもそのマンションに居候した。
ソファで丸くなって眠り、夢も見ずに目覚めると、神谷の腕の中だった。
ソファの匂いと彼の匂いが混ざって、朝がやわらかい。
彼はまだ眠っていて、カーテンの隙間から一筋の光がまつ毛に落ちていた。
昨日は彼の枕を抱いて寝て、今日は本人を抱いて寝ている。
相原、お前はどんどん図々しくなっているな。
心の中で自分にツッコミを入れる。それでも離れたくない。
私はそっと起き上がろうとしたが、手が滑り、顔が彼の首筋に埋まった。
神谷の体はいつも爽やかなミントの香りがする。私は無意識にその香りを嗅ぎ、顔を上げると、神谷が目を開けて私を見ていた。
気まずい空気が流れた。人のベッドに勝手に上がり、しかも変態みたいに匂いを嗅いでいる。
私は鼻をこすりながら言った。「ごめん、夢遊病みたいで、自分でもどうしてこうなったのか分からない……」
言い訳のバリエーションが貧しい。けれど、今はそれしかない。
神谷は気にする様子もなく、手を上げてだるそうに言った。
「着替え、手伝ってくれる?」
頼み方が普通すぎて、逆に照れる。
私はほとんど目を閉じて彼の着替えを手伝った。その間、神谷はこう聞いてきた。
「昨日、うちで泊まったこと、彼氏は知ってるの?」
左から「彼氏」、右からも「彼氏」。私はもうごまかしきれなくなりそうだった。
服を整えながら、もごもごと「別れた、もうその話はやめよう」と言った。
喉の奥が熱い。言葉の重さで、息が詰まる。
神谷は少し驚いたようで、私は慌てて洗面所に逃げ込んだ。
私はあまりにも急いでいたので、背後の視線に気づかなかった。
鏡の中の自分は、耳まで赤かった。
……










